月のかけら

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小説「また、あしたね」 第一部 その1

また、あしたね

また、あしたね 目次



小説「また、あしたね」 第一部 その1

「出て行って、この鬼、鬼婆!!」
「ちょっと、美咲ちゃん。やめなさい」
「美咲、美咲」
若い女性だろうか、それとも女の子だろうか? 大きな叫び声が病室から響き渡ってくる。
僕は、ちょっとした事故に巻き込まれて、数日前から、この病院にお世話になっている。
旅先で事故に巻き込まれ、緊急入院。もちろん、この街には、友達も、親戚もいない。両親は高校の時に事故で別れて以来、会う事も出来ない。姉がいるのだが、ここに来る前に訳ありの喧嘩をしている。だから、今のところ誰にも連絡をいれていない。
まぁ、最近は仕事が忙しかったので、ちょっとした休暇だと思っている。普段の休暇なら、超が付くほど、インドア指向の僕。入院生活には飽きずにいられると思っていたが、ちょっと甘かった。
何度も言うが、旅先での入院生活。暇をつぶす娯楽道具が全くない。ブルーレイを見ることも、ゲームをプレイすることも、ネットサーフィンも出来ない。さらにベットからでることも許してくれない。さすがにベットから見える病院の天井は見飽きた。
 でも、今日からは、病院内であれば、歩いてもよい許可が出た。それなら気分転換に散歩してみようと言う気分になった。僕は松葉杖を使いながら、病院の廊下を歩いていた。さすがに慣れない松葉杖は疲れる。ちょっと一息と、廊下の長椅子に座ったところに、先ほどの女の子の声が聞こえてきた。
病室のネームプレートには「影山美咲」一人分の名前が書いてある。
個室のようだ。相部屋であれだけ騒がれたら迷惑だろうが、個室なら気楽に騒げるか、と他人事の様に思う。
「だから、受けないって言ってるでしょ。たった10%の成功率の手術なんて受けてどうなるのよ」
「でもね。でもね、受けないと」
「絶対に、イヤよ」
どうやら、難しい手術みたいだ。僕なんて足の骨を折っただけで、その他は打撲に切り傷ぐらいだ。それでも頭を打ったこともあり、一応大事を取って一週間ほど検査入院している。命に関わる病気・・・さすがにその気持ちは正直、僕にはわからない。毎日毎日続いていると思っていた日々が、ある日突然、「あなたの命は残り少ない」と言われれば、どれだけ落ち込むだろうか。病院で治療できればいいが、それも無理とわかれば、彼女の様に荒れるのも仕方がないだろう。
すぐに収まるだろうと思っていたが、病室からは女の子の大きな声が続いている。周りの人も気がついたようで、遠くからこちらの病室を見ながらささやきあっている。
僕は、この騒ぎには関係ない。当事者と思われるのも嫌だ。場所を変えようと椅子から立ち上がる。中庭にでも行ってみようと、松葉杖を使いながら歩く。騒ぎのある病室の前を通り過ぎると、後ろからパタパタという音が聞こえてくる。
僕はドンと言う音とともに背中を誰かに押された。倒れないように踏ん張ってみるが、僕の努力に反して松葉杖が僕の手を離れていく。僕は大きな音を二回立てながら、派手に転んだ。
病院の廊下が、優しいほど柔らかいことはなく。転倒した衝撃が、骨折した足に痛みとして伝わる。背中を向けて倒れ込んでいる僕の横を、誰かが通り過ぎていく。僕は痛みをこらえながら、顔だけ上げると走っていく女の子の背中がみえた。髪はロングで綺麗な黒髪、淡いピンクのパジャマに白いカーティガンを羽織っている。女の子は廊下を走っていくと、すぐに見えなくなった。
僕は体を起こすと、後ろを振り返る。先ほどの病室のドアが開いている。病室からは二人の女性が顔をのぞかせていた。
「すまないな。君」
白衣を着た女医が僕に声をかけてきた。
「すいません。お怪我はありませんか?」
もう一人の女性は、僕に駆け寄ると、何度も謝罪をすると、廊下に転がった松葉杖を拾って手渡してくれた。僕は、「大丈夫ですよ」と言うと、女性は女の子が走っていた後を追いかけていった。
「すまないな。ちょっと、荒れていてな」
残った女医が僕に再度、話しかけてきた。女医は僕の横に立っていた。女性にしては背が高めで、スラリとした体つきで灰色のスーツに白いシャツ。髪は頭の後ろにまとめている。清潔感が漂い頼りになりそうな感じだ。
「細かいことまでは、知りませんけど、何となくわかりますよ」
僕は女医を一度見ると、廊下の窓を見ながら答えた。彼女は黒岩各務、僕もこの病院に入院したときの当直の医者だ。何度も話をしているが、実は、僕はこの女医が苦手だ。
「盗み聞きか?」
「たまたま、廊下を歩いていただけです」
「そうなのか」
「そうですよ。あれだけ大きな声で叫んでいれば、少しは聞こえてきますよ」
「まぁ、確かに」
「じゃ、僕は」
そう言うと僕は、この場を立ち去ろうとすると、止められた。
「まぁ、待て待て、望《のぞみ》君」
「嫌です」
「折角、この場であったのも、何かの縁だ」
「嫌でも病室で、会えますよ、各務《かがみ》先生」
「いいじゃないか、ちょっと、今日の問診だ。これは、何に見える」
各務《かがみ》先生は僕にふたつの親指を見せる。
「親指ですよ」
「残念だ。ちがうぞ。二本の親指。親が二つ・・・親が二つ・・親二つ・・親がふたつー・・・で『おやつ』が正解だ」
「・・・」
「どうだ、面白いだろう。遠慮無く笑ってくれ」
僕は廊下で恥ずかしげもなく、遠慮の無い笑い声を響かせる各務《かがみ》先生を白い目でみる。壺にはまったのか、各務先生はお腹を抱えて笑っている。僕は、この隙に見つからないように、こっそりと逃げだそうと思ったが、松葉杖では逃げ出せないと諦め、先生の笑いが収まるのを、廊下の長椅子に座りながら待つことにした。
各務先生が苦手な理由、それは彼女の持つ独特の笑いセンスだ。もう、数日も病院にいると、さすがに先生の話に愛想笑いするのも疲れてきた。同僚の医者に聞いてもらえばいいのにと思ったが、各務先生の笑いに同調する人はいないみたいだ。
他の先生達は、各務先生と必要な事を話終えると、足早に逃げていく。足の自由が聞かない僕は、スッカリ各務先生の相手をさせられてきた。それも、今日までと思っていたが、今日も各務先生に捕まっている。
「で、先生いいんですか?」
僕は各務先生が落ち着くと、気になった事を聞いた。
「何がだ?」
「何って、女の子ですよ。逃げていきましたよ。追いかけなくてもいいんですか?」
「どうして、私が、追いかける必要がある」
「だって、お医者様でしょ」
「確かに、私は医者で。でも、それと、これは関係ないだろ」
何を言ってるのだろうか。それとも、各務先生のお得意のボケなんだろうか。各務先生の顔を見ると、ボケている様には見えない。それとも、これは僕の突っ込み待ちなんだろうか?
「各務先生、何があったんですか? 美咲ちゃんが飛び出していきましたよ」
僕が各務先生が何を考えているんだろうかと迷っている内に、看護師が走ってくる。各務先生は看護師にも、ボケとも突っ込みともわからないことを言っている。
看護師は、かまっていられないと思ったのか、今度は僕に何があったのか聞いてきた。僕も廊下にいただけで詳しいことはわからないが、知っていることを看護師に伝える。看護師に話を終えると、すでに各務先生はいつの間にか、どこかに消えていた。
「もう、各務《かがみ》先生は役に立たないわね」
僕は看護師の怒る姿に、少し笑ってしまった。確かにつかみ所の無い先生だ。どうして、医者が務まるのか。ちょっと不思議だ。僕は看護師と別れると、病室には帰らず、中庭に向かって歩き出した。特に理由があったわけではないが、たまには外の空気を吸ってみたいと思ったからだ。普段、何気なく自由に歩き回ることが出来た訳だが、病院に入ると、それも出来ない。一週間ほどだったが、病室に縛られていたせいもあり、気晴らしにいいかなと思っていた。




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- 1 Comments

やよい優  

No title

新作開始ですねe-343
今回は、主人公が一人称になるんですねe-420

各務先生のキャラクターが、また強烈ですね(笑)
確かに、入院生活では辛そうです…

2011/04/21 (Thu) 22:28 | EDIT | REPLY |   

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