月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

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小説「また、あしたね」 第一部 その2

また、あしたね

また、あしたね 目次



小説「また、あしたね」 第一部 その2

 松葉杖を使い、病院の売店まで僕は来ていた。慣れない松葉杖の移動は、思ったより疲れることを僕は、始めて知った。売店でも、棚の下や上にある商品に手を伸ばすことが出来ずに困った。些細なことだが、体が自由に動かない不便さを思い知った。
何とか、お目当ての烏龍茶のペットボトルと、山葵《わさび》味のスナック菓子を買うと、僕は病院の中庭に向かう。中庭に来ると、そこには小さな円状の池がある。周りには、天使が地上に舞い降りる彫刻が置かれている。余り手入れをされておらず、所々に緑の苔《こけ》が生えている。池を囲むように、その周囲にベンチが三つ置かれている。ベンチの後ろには、階段状の花壇と大きな皐月《さつき》の木が植えられていた。花壇は、春先には綺麗な花が植えられているのかもしれないが、今は真冬の時期で土の色が見え、味気なかった。
「誰もいないよな」
暖かな日差しがあるが、春には少し早い。まだまだ肌寒い。中庭のベンチは誰も座っておらず、場所は僕の自由だ。僕は独り言を言うと、手近なベンチに腰を下ろす。売店で買ってきた烏龍茶とスナック菓子を袋から取り出すと、ベンチに置く。烏龍茶のペットボトルを開けると一口飲む。
病室から、売店、中庭と大した距離を歩いた訳でもないが、やっと一息入れられる。一週間動かないだけで、ずいぶん体力が落ちた気がする。「バタン」と大きな音がベンチの後ろから聞こえてきた。僕は後ろを振り返ると、中庭のドアが開いていたが、ドアを開けた人は見えなかった。誰だろうと思う。扉を開けたが、寒い中庭に、病院内に戻ったのだろうと思うと、前に向き直る。
「ちょっと、誰か来たら、『誰も来てないって答えてよ』 いいわかった?」
僕の前には、見覚えあのるパジャマ姿の女の子が立っていた。髪は綺麗に手入れされたストレートの黒髪。肌はビックリする程、白かったが病気には見えなかった。優しそうな表情をしているが、やはり、第一印象が悪い。命令調の口調に僕は不快感を覚える。
女の子は僕の返事を聞かないないまま、ベンチの裏に回り僕の影になるように隠れる。
廊下で会ったときのように、淡いピンク色のパジャマに白いカーティガンを羽織っている。少し寒いのか、胸の前で腕を組むようにしているため、少し胸が強調された感じに、僕の目線は釘付けになりそうになる。
「ちょっと、どこみてるのよ。これ以上は有料よ」
おいおい、どこの世界にパジャマ姿を見ただけでお金が必要な、女の子がいるだろうか。僕はベンチの裏に隠れた女の子の変わりに、噴水をみる。売店で購入したスナック菓子の袋を開けると、スナック菓子を口に放り込む。すぐにツンと鼻に来る刺激が来る。
「いいもの食べてるじゃない。ちょっとちょうだい」
ベンチの裏から女の子の声が聞こえてくる。
「あっ、後ろ振り向かないでよ。袋の口を後ろに向けて」
僕は、言われた通りにスナック菓子の袋を後ろに向ける。女の子はベンチの裏から手を伸ばすと、スナック菓子を手に取る。スナック菓子を噛むサクサクといい音が聞こえる。
「・・・・・☆!☆!☆!☆☆☆」
ベンチの裏から必死に声を殺している様子が伝わってくる。スナック菓子の山葵味(わさび)、ちょっと子供に刺激が強いだろう。僕も、病院でなければ、ビールと一緒にいただきたいぐらいだ。
「ちょっと、何て物食べさせるのよ」
女の子がベンチの裏から立ち上がると、僕に怒ってくる。
「君が「ちょうだい」って言ったんだろ」
「言ったわよ。でも、こんなに辛いなら一言、言っても、バチは当たらないわよ」
女の子は両腕を組み、仁王立ちになると僕を威圧をかける。顔が可愛いだけに、イマイチ迫力に欠ける。
「そう、それは、配慮がたりませんで、申し訳ない」
何で僕は謝ってるのだろうか?
「そう、わかればよろしい」
女の子は嬉しそうに納得すると、じゃ、もう一口いいかなと聞いてくる。
「いいけどね。隠れなくていいの。君を捜している人が来たみたいだよ」
「げっ、ホント」
可愛い割に言葉遣いが雑だ。僕では年上に見えないのか、友達感覚の会話だ。ぼさぼさの髪にパジャマ姿の自分を想像すると、気のいいお兄さん程度だろう。そんな事を思っていると、いつの間にか、先ほどの女の子の母親が目の前に着ていた。
「先ほどはすいませんでした。あの美咲ですけど、この辺りで見ませんでしたか?」
そうか、病室にも書かれたいた影山美咲とは、あの子のことか。
「あっ、ごめんなさい。ピンクのパジャマに、白いカーティガン。髪はストレートの腰ぐらいまである感じの女の子ですけど」
僕は、先ほどの一方的な約束を守るため、嘘をついた。さすがに、まだ肌寒い季節、外を探し回るのも悪いと思うと、病院内に入って行ったことにしておいた。母親は、何度もお礼を言うと病院の中に入っていた。
「ありがとね。気がきくじゃない」
母親が病院内に消えると、ベンチの裏から、女の子が出てきた。
「私、影山美咲、また、何かあったらよろしくね」
「嫌なこった」
「何でよ。こんなに可愛い子が「よろしくね」って言ってるのよ。涙が出るほど嬉しいでしょ~」
普通は、自分の事を「可愛い」なんて言わない。
「何、黙り込んでるのよ。ひょっとして、話題の草食男子」
美咲はスナック菓子を口に放り込むと、山葵の刺激に体を小さくして耐える。
「うわぁ~、やっぱり効くね。この山葵味」
「この辛みがいいだよ。お酒のおつまみに最高」
「私未成年だもん。それに・・・」
「それに?」
「何でもない。それよりも、お茶頂戴」
美咲はそう言うと、僕の返事を待たずに、烏龍茶のペットボトルの蓋を開ける。ペットボトルの口に美咲の小さな口が触れる。コクコクと烏龍茶を飲む音が聞こえる。その姿をみると僕は、少し赤くなる。
「うん、美味しい」
美咲がペットボトルをベンチに置くと、僕の隣に座ってきた。
「ねぇ、名前は? いつからこの病院にいるの」
僕はとりあえず、名前を教える。旅の途中で交通事故に巻き込まれ入院中と答える。
「馬鹿ねぇ、旅行に来て入院なんて、馬鹿よ」
「仕方ないだろ、後ろから車が衝突するなんて、誰が想像できるんだよ」
「絶対に違う、望《のぞみ》の・ふ・ち・ゅ・う・い。さっきも「ぼーぉ」とベンチに座っていたし」
もう、呼び捨になってるし。一応、年上だぞ、僕は。
「もう、いいよ、僕の怪我の話は」
美咲はよくないと言うと、それから、どこに住んでいるのか?趣味は?彼女は?と僕の事を根こそぎ聞きだそうとしてくる。僕は、美咲のテンポに引きずられながら、答えていると、中庭にある噴水の水が大きなアーチを描きながら空を舞う。空に出来た水のアーチは、日の光を浴び虹の作り出す。僕は、時間帯によって噴水の水が出るのだと、この時は思っていた。噴水の水が出ると、それまで、嬉しそうに話をしていた美咲が急に黙り込みながら噴水を見ている。
「退院、おめでとうございます」
病院のドアが開き、看護師達が出てくる。後ろには花束をもった女性が嬉しそうに、何度も看護師達にお礼を言っている姿が見える。女性は、看護師ひとりひとりに握手をしながらお礼を言っている。その中には男性の医者も見える。女性の目には少し涙が見える。病院生活が長かったのだろうか?それとも、大きな病気だったのだろうか? どちらにしても退院できる事は嬉しいだろうと思う。
看護師達に見送られながら、花束を持った女性は噴水のアーチをくぐろうと歩き出す。美咲は花束を持った女性を、じっと見ていた。
「うらやましいの」
女性が噴水のアーチを歩きながら、看護師達に見送られていく。ちょっと気がきいた演出だと感じる。これで、春先なら花壇の花々も咲いていて、ちょっとしたお姫様気分かもしれない。女の子なら嬉しい演出だろうと思う。
「・・・・うらやましくない」
「どうして?」
「どうしてもうらやましくないのよ」
美咲は突然、大きな声で叫ぶと、同時に、バチッ、と大きな音がする。僕は何が起きたのか、すぐにはわからなかった。
「人の気も知らないで、何言ってるよ」
美咲が目に涙を滲ませながら、僕の上着を掴みながら言うと、次の瞬間、すぐに手を離すと「ごめん」とうつむきながら言う。そして、後ろを向くと病院に駆け込んでいった。
僕は頬に残った痛みを感じると、頬に手を当ててみる。痛みは一瞬だった。でも、それ以上に美咲の淋しそうな表情に、僕は締め付けられるような感覚を覚えた。

「たった10%の成功率の手術なんて受けてどうなるのよ」

廊下で聞いたあの台詞が、ふっと頭をよぎった。あれは、美咲が言った言葉だった。少し考えれば、わかること。僕はスッカリ忘れていた。イヤ、美咲の事だとは、結びつけていなかったとは言え、僕は酷いことを言ってしまった。成功率10%の手術を前に、退院する人を見て「うらやましい」とは、我ながら嫌な奴だと感じる。
「大丈夫か?」
各務《かがみ》先生がいつの間にか、隣に立っていた。突然いなくなったと思えば、突然現れる。
「見ていたんですか」
「イヤ、見てない、見てない。君が頬を打たれるところ何て見てない、見てない」
見てたなこの野郎。
「ちょっと、酷いこと言ったかもしれません」
「ちょっと、酷いとは認識不足だな。かなり、酷いことだ」
「やっぱり、そう思いますか」
「それ以外、どう感じればいいのかな・・・人として」
「先生・・・容赦ないですね」
「まぁな。女の子を泣かす様な、ゲス野郎には特にな」
容赦ない言葉に僕は少しめまいを覚える。美咲とも、ついさっき出会ったばかり。病気のことを知らなくても当たりまえだろうと反論するが、各務先生は『女の涙』に勝る物無しと切り捨ててきた。
「もういいですよ、僕の負けです。で、先生。あの子の病気は重たいんですか?」
「個人のプライバシーに関する事だ」
「ずいぶん、まともな事、言いますね」
「私はいつも真面目だ。何を見て言っている。このゲス野郎」
どの口開いて言ってるんだよ、この先生は。
「僕としては、仲直りできる切っ掛けがほしいんですよ。このまま、泣かせたままじゃ、僕も気持ちよく退院できないですよ」
「そうだなぁ、確かに後腐れは悪そうだな、ゲスゲス野郎」
「そうでしょ」
いつもで続けるつもりだろうか?すっかり語尾がゲス野郎になっている。
「でも、患者のプライバシーに関しては、私の口からは言えないからな。それに君の退院まで後、数日はかかる。少しは自分で切り開きたまえ、じゃな、エロエロゲス野郎君」
・・・もしかして、美咲の胸元を見ていたところから、各務先生は見ていたのだろうか。各務先生は、僕の顔をみると、嬉しそうな表情を浮かべる。
楽しんでる、絶対に僕をからかって遊んでいる。
各務先生は、僕の反応を楽しむと、回診の続きがあるからと言うと立ち上がると病院内に消えていった。
ホント、油断できない先生だ。次からは、もう少し周りに気をつけないといけない。
各務先生が病院内に消えると、やっと僕は一人になった。気晴らしにきたはずの中庭で、問題を抱えてしまった。旅先の病院で出会っただけの事、重く感じることもないと思う。
「さて、どうするかな」
重く感じることは無いと思うが、やっぱり気になる。
病室は、知っているが、今は行っても追い返されそうだ。僕はスナック菓子を口に放り込む。
「・・・・、確かに、効くな、この山葵味」


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- 1 Comments

やよい優  

No title

美咲ちゃんに、各務先生…。
面白い個性を持った人たちですねe-420

内容は重たそうなのに、この個性が、ちょっと軽くしてくれますねe-343

2011/04/29 (Fri) 21:03 | EDIT | REPLY |   

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