月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

小説「また、あしたね」 第一部 その6

また、あしたね

また、あしたね 目次



小説「また、あしたね」 第一部 その6


僕はベッドから見える月を見ていた。
今日の美咲の事を思い出していた。軽い気持ちで連れ出した。たった百メートル足らずのコンビニ、歩いて行って帰ってきても数十分の距離だ。美咲が病院で母親から逃げ回っている姿から、コンビニに行って、お気に入りのお菓子を買うぐらい問題ないと思っていた。
それが、あんな事になるなんて思ってもいなかった。中庭で倒れてからの美咲は、集中治療室に入り処置を受けると、一時間ほどで通常病室へ戻ってきた。
意識は無かったが、命に別状はなく。明日には回復するだろうと各務先生から伝えられると、僕は腰が抜けたように廊下の椅子に座り込んだ。後は、病室に戻ると、それからの記憶はない。たぶん寝ていたんだろと思う。
月を見ているとしばらく見ていると、月の光に照らされて屋上の人影に気がついた。
「美咲・・・」

・・・壱

僕は屋上の人影をみると、美咲の名前を呼んだ。ここから聞こえるはずはない。でも、叫ばずにはいられなかった。今朝見たパジャマ姿で、屋上に出てきた美咲は屋上の手摺りから街を眺めているように見える。でも、僕は病室のベットから飛び降りると、走り出す。美咲の姿をみると胸騒ぎが止まらなかった。
ベットから飛び降りると、僕は大きな音を立てながら転倒した。情けない話だ、足をギブスで固めていることを忘れていた。ギブスをしたまま走れる訳はなく。僕は体を起こすと松葉杖を探すが、ベットの反対側にあり、取りに行くには時間がかかりそうだ。
僕は松葉杖を諦めると、立ち上がる。今度は少し慎重にバランスを取りながら歩き出す。病院の廊下は少し、滑るが何とか歩けそうだ。数歩歩くと、さらに勢いをつけて歩き加速する。
「いける」
僕はそう言うと、ギブスをつけたまま、病院の廊下を走っていく。屋上へはエレベータを使い上に上がる。夜中でエレベータを使っている人はおらず、すぐに屋上にたどりついた。
「美咲」
美咲は返事をせずに、少しこちらをみる。
「もう終わりにしたいの、望。手伝ってくれる?」
「そんなこと言うなよ」
「もう、疲れちゃった」
美咲は少しだけ笑顔を見せる。でも、ホントに嬉しそうな笑顔には見えない。
「今まで外に出かけても、運動しても、何をしていても苦しくなる事なんて無かった。どうして私だけがこんな目に合うの?、どうして私なのよ・・・・まだまだ、好きな人といっぱい話もしたいし、いっぱいいっぱいお洒落だった楽しみたいのよ・・・・まだまだ、これからなのに、どうして私なのよ・・・」
美咲はゆっくりと、僕に向かった歩いてくる。大粒の涙を流しながら、ゆっくりとゆっくりと歩いてくる。
「信じられないわよ。今だって、自由に動けるのに、自由にお話だって出来るのに・・・、あと、数ヶ月もしないうちに、体が動かなくなって、心臓も、呼吸も止まるなんて信じられない」
「・・・」
「もう、手術したって助からないなんて・・・受け止められない」
「そんなこと無い」
「成功率・・・たった十パーセントなのよ。手術で死ぬぐらいなら、このままでいい。このままでいいの・・・だって・・・・それなら、あと数ヶ月は生きていられるから」
美咲はそう言うと両手で体を抱え込むと地面にしゃがみ込む。僕はしゃがみ込む美咲を見ると、かける言葉が見つからないような気がした。成功率十パーセントの手術、十代の美咲に命をかけて挑むには酷な選択だ。手術をしないと選択を選んでも、美咲が悪いわけでもない。
「でも、成功率は0%じゃない」
「無理、無理、無理、無理、無理・・・・無理だよ・・・私、怖いのよ」
「・・・怖い」
「怖いの・・・たった十パーセントなんだよ。そんなの奇跡でも起きない限り無理だよ」
美咲は人ごとだと思って、気軽に言わないでと泣きながら、望にぶつかってくる。何度も望の胸に拳を叩きつけた。何度も何度も何度も、繰り返し美咲の拳が望の胸をたたく。
「奇跡は起きるよ。それを願って頑張る人には・・・きっと」
望は美咲が落ち着くの待ってから、小さな声で言う。
「無理だよ・・・そんな怖い賭には命をかけられない」
「それでも、君は手術を受けるべきだ」
僕は今日、手中治療室の前でみた母親の姿を思い出すと、ゆっくりと美咲に言い聞かせる。美咲のことを思っている人がいること、成功する方法を考えている先生達がいること。絶対に成功する。失敗はないと強く信じることを美咲に伝える。
「無理だよ・・・だって、だって、怖いんだよ、怖いんだよ、怖いんだよ。麻酔で寝たら最後かもしれないんだよ。もう、毎朝起きて、ご飯食べて、顔洗って、歯磨きして、学校に行って、友達とテレビや芸能人の話をして、放課後に恋バナしてたり、毎日続くと思っていた日々が終わっちゃうんだよ」
「・・・」
「もう、いっそのこと、みんな死んじゃえばいいのに、私だけが死ぬなんて不公平よ」
「本当にそう思ってるの」
美咲は返事の変わりに、小さく頷く。
「じゃ、一回、死んでみる?」

・・・零

望はそう言うと、美咲の肩を軽く押す。不意を突かれた美咲は数歩後ずさると、体にふわりと浮く感覚が伝わってくる。美咲の頬を勢いよく風が吹き付けると、長い髪が空に向かって流されていくのが見える。病院の窓ガラスだろうか?自分の体が空中を落ちているのが見える。
美咲は自分が病院の屋上から落ちた事を自覚する。屋上には柵があり、望に押されただけで落ちるはずがない。でも、自分の体は今、病院から落下している姿が見える。後、数秒で衝撃が私の体を襲って終わりだ。あっけないなぁ~と思う。でも、望に押されて死ぬなんて、もう、いけてない。絶対にいけてない。あの世に言ったら、地獄の閻魔様に言いつけてやる。私は親不孝者だし、地獄行きだよね。
何で最後に望のことを考えるかなぁ~と思うと、ふと、美咲は両親の顔を思い出す。ごめんね、お母さん、お父さんと美咲は思うと、そこで美咲の意識がとぎれた。


応援よろしく!クリックで投票


ネット小説
異世界恋愛コミカル

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へ
★にほんブログ村投票


FC2ランキング
投票

MEGURI投票
小説一般(恋愛)

 小説 また明日ね・・・

0 Comments

Leave a comment