月のかけら

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小説「また、あしたね」 第一部 その7

また、あしたね

また、あしたね 目次


はじめに、
 
 東日本大震災で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。皆様の安全と、一日でも早い復旧、復興をここよりお祈り申し上げます。 本作品「また、あしたね」は震災前に書いていた作品です。作品上の演出にて、被災された方に不愉快な思いをさせるのでは無いか? と考え、一度、延期することも検討しました。 著者としては、色々と悩みました。 本作品を震災から一ヶ月を区切りと考え、修正せずに公開することにしました。ご了承の程よろしくお願いいたします。


小説「また、あしたね」 第一部 その7


「あら、お目覚め、おはよう」
「・・・え」
見慣れた天井が見える。聞き覚えのある声も聞こえてきた。
「もう明日には退院、出来るし。生活に慣れてきたら、学校も行かないとね」
美咲はゆっくりと、両手を顔の前に持ってくると、軽く手を握りしめてみる。窓の外をみると、お日様の日差しが肌に感じられる。体を動かしてみる。大丈夫だ手も足もある。痛いところもない。でも、どうして。
「どうして、私、病院から落ちて死んだはずじゃ」
美咲の言葉に、母は笑い出す。
「何言ってるの、手術も成功したし、午後には退院よ。寝ぼけてるの?」
「えっ、だって、」
美咲は納得がいかなかった。ついさっき、私は病院の屋上から落ちて死んだはず。それに、手術だって私はいつ受けたのか。手術を受けた覚えは無い。頬をつねってみる。痛い、痛い、痛い、痛い、痛い・・・痛い。母は美咲の行動をみると、笑いながら「何をしてるの」と言っている。
「でも・・・」
「しっかりしてよ。入院生活が長かったでは、明日からはすまないわよ」
美咲は頬から手を離す。
「美咲ちゃん、おはよう」
「各務先生・・・」
美咲は曖昧な返事をすると、各務先生も寝ぼけるのか、と問いかけてくる。元気のない私は珍しく見えるらしい。各務先生は体温、血圧を測り、いくつかの問診をすると、明日には退院だと言って、次の病室に向かったいった。
「よかったわね、美咲」
「うん」
夢じゃ、無いんだろうか?美咲は今の現状に疑問を感じる。でも、そんな疑問は次の瞬間に消える。
カタカタと美咲の隣から音が聞こえてくる。天井からはギシギシと音聞こえてくる。
「美咲!!」
母親が美咲に駆け寄ってくる。美咲はベッドから体を起こすと、ベッドの手すりにつかまる。窓ガラスがガタガタと音を立てる。廊下からは悲鳴が聞こえてくる。
「母さん、地震・・・だよね」
美咲は揺れの続いているベッドの上で母親に確認をする。地震だとわかっているが、それでも母親に確かめた。
「ええっ、ちょっと長いわね。でも、大丈夫よ」
美咲の母親はベッドの上の美咲を守るように抱きしめる。地震は左右にゆっくり、ゆっくりと美咲のベッドを揺らしている。机の上の花瓶が倒れて、床に音を立てて床に落ちる。花瓶が割れる音が響き、続いて机が転倒する。
「母さん」
「大丈夫、大丈夫よ・・・時期に収まるわよ」
美咲の母親は大丈夫と言うが、地震は収まる様子をみせない。ゆっくりとした横揺れは、小さな横揺れに変わり始める。窓ガラスが揺れの限界を超え始め、次々と窓ガラスが割れ始める。廊下からは、他の病室からの悲鳴が聞こえてくる。
「美咲、ベットの下、ベッドの下」
美咲の母親は美咲を抱えると、地震の揺れに足を何度か取られながらも、ベッドの下に潜り込む。美咲と母親はベッドの下に潜り込むと、ベッドの足にしがみつく。地震は容赦なく病院の床ごと、美咲達を揺さぶり続ける。廊下からは、ガラスの割れる音、物が倒れる音、入院患者、看護師、医者の悲鳴が聞こえてくる。そして次の瞬間、ドンと大きな音が響くと、美咲と母親はしがみついていたベッドごと空中に持ち上げられる。横に揺れていた地震が、縦の大きな揺れに変化していた。
地震の揺れは、病院の建物に深刻な影響を与え始める。照明が消え建物が暗くなる。建物の壁、床、天井に次々と地震によるひびが入り始める。小さなひびは、揺れを受けるごとに、徐々に大きくなる。壁のコンクリートが次々とはがれ始める。建物全体から白い煙が上がり始める。
私、死んじゃうのかな、と美咲は地震の揺れの中で感じる。隣にいたはずの母親の姿は見えない。どうして、こんな事になるの。自然の力になすすべのない美咲は、なぜか涙が出てくる。もうダメだと思うと、地震の揺れは収まり始める。
「美咲、美咲・・・大丈夫」
地震の揺れが収まると、美咲の母親の声が聞こえてくる。母親は美咲を見つけると、すぐに駆け寄ってくる。
「お母さん・・・」
美咲は母親に抱きつくと泣き出す。
「美咲・・・怖かった・・・でも、泣くのは後よ」
母親は立ち上がると、病室の隅の転がっている車椅子を見つける。車椅子を起こし、壊れたところが無いか、車椅子を押してみる。特に問題はなさそうだ。すぐに美咲に駆け寄ると、美咲を抱き起こし、車椅子に乗せる。車椅子を押しながら病室を抜け出すと、廊下は瓦礫や窓ガラスが飛散している。
「美咲さん。大丈夫ですか」
廊下に美咲と母親の姿を見つけると看護師が駆け寄ってくる。母親は大丈夫ですと返事をする。
「すぐに建物から避難してください。ここからなら、階段を下りてロビーを抜けて駐車場まで行けば安全ですから」
「わかりました。でも、階段は」
母親は美咲を見ると、看護師はすぐに、わかりましたと返事をすると、美咲を乗せた車椅子を押し始める。階段まで来ると、美咲を車椅子から降ろし、今度は背中に乗せる。
「お母さんは車椅子をお願いします」
「はい」
看護師は美咲はおぶったまま、階段を下りる。無事に階段を下りると、再び、美咲を車椅子に乗せる。
「すいません。お母さん、ここからは一人でお願いします。私は、病室に残ってる人を見てきます」
「ありがとうございます。ここまで来れば、一人で大丈夫です」
「はい、では、失礼します」
看護師は、そう言うと再び、階段を駆け上がっていく。
「美咲、行くわよ」
「うん」
車椅子を押すと、今度は予告なく無しに大きな縦揺れがおきる。美咲は車椅子にしがみつく。
「イヤァーー」
美咲は恐怖に耐えきれずに、悲鳴を上げる。
美咲の母親は、地震の揺れの中、しっかりと車椅子に押さえながら、前をみる。
ロビーのドアが地震で大きく開いている。あのドアさえ出る事が出来れば助かる。母親は美咲をみる。美咲は絶対に死なせない。美咲の母親は、地震におびえる美咲を後ろからゆっくりと抱きしめる。
「美咲・・・美咲、美咲」
母親は優しく美咲に呼びかける。おびえていた美咲は、母親の声に、次第に冷静さを取り戻す。
「美咲よく聞いて。美咲は、まだ、死んじゃだめ。美咲はね、今日まで苦しい事に耐えてきたわ。でも、今日からは、いいことがいっぱい待ってるの。苦しい思いをした分、あなたには幸せが待ってる。だから、死んじゃだめなの」
美咲はゆっくりと振り返ると、母親の顔を見る。そこには優しくほほえむ母がいる。
「・・・うん」
美咲の母親は美咲の返事を聞くと、しっかり掴まっていていなさいと美咲に伝える。車椅子は、ゆっくりと加速をすると走り出す。床に落ちたがれきや、机、椅子を避けながら進む。その間も地震は容赦なく建物を破壊していく。
美咲の乗った車いすが、ゆっくりと建物の外に出てくる。建物の崩壊で土煙が舞い、周りがよく見えないが、うっすらと避難した人達が見える。
「お母さん、すごい、すごい、助かったわ。助かったよ」
美咲が病院の外に出ると、地震は揺れも収まってくる。
「お母さん、聞いてる。助かったわよ、もう、地震が来たときは、もうダメって思ったけど、火事場のクソ力ってやつだね」
美咲は嬉しそうに車椅子を押している母親に向かって振り返る。
「・・・・・お母さん・・・」
ゆっくりと動きを止める車椅子。美咲が振り返った場所に、今さっきまで車椅子を押していると思ってた場所には、誰もいない。美咲はじっとしたまま動かない。風が舞い上がった土煙を押し流していく。
ゆっくり、ゆっくりと土煙が消えていくと、そこには元病院だったであろう場所に瓦礫の山が積み重なっている。
「嘘・・・・・」
美咲は泣きながらお母さんと叫ぶ。


「・・・え」
美咲の目の前に見慣れた天井が見える。聞き覚えのある声も聞こえてきた。
「どうしたの美咲、大きな声だして、怖い夢でも見たの?」
美咲は呆然とする。地震が来て、車椅子に乗って外にいたはずなのに・・・、どうして。
母親が駆け寄ってくる。美咲は、ゆっくりと頬に手を当てると、暖かい涙が手に触れる。
「もう、泣いたりなんかして、どんな夢みていたの」
美咲は、隣にいる母親をゆっくりと見る。
美咲の目から涙があふれてくる。美咲は母親に抱きつくと、しばらくそのままの姿で泣き続けた。

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