月のかけら

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小説「また、あしたね」 第一部 その10

また、あしたね

また、あしたね 目次



小説「また、あしたね」 第一部 その10

「今日も暖かいね。お母さん」
手術から二週間。病室には、少し顔色が悪いが美咲がベッドに寝ていた。成功率10%の手術はあっけなく終わり、成功した。各務先生の手術は順調に進み、美咲は驚くほど、急速に回復をしていた。
「お母さん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「何、改まって?」
「行きたい場所があるの。だから、ちょっと一人で行ってもいいかな」
そう言うと美咲は車椅子を見る。まだ、歩けるほど体力が回復していない。先日から車椅子での、リハビリを始め、少しだけ動ける様になっていた。だから、確かめたい事があった。手術前は、何度も押しかけて会っていたが、昨日まで動くことは許されていなかった。
それに、一度ぐらい、病室にお見舞いに来てくれればいいのに、いったい、どう言うつもりなんだろうと、ここ数日悩んでいた。もやもやした気持ちを抱えてるなんて、私にはあわない。美咲は実力行使に出ようとしていた。
「いいわよ。じゃ、三十分だけよ」
美咲の母は、車椅子をベッドの横に着ける。
「ありがとう」
美咲は車椅子に乗ると、母に行ってきますと言うと、勢いよく車いすを押していく。美咲の母親は美咲の元気な姿をみると、ビックリする。人にぶつからないようにと美咲に注意するが、本人には聞こえてないようだ。
この時間なら中庭にいるのかなと、美咲は中庭が見える場所に移動する。噴水前のベンチには、目的の人物はいなかった。
「どこにいるかな・・・!」
私がヤツの病室を知らないとでも思ってるのかしら。残念、ちゃんと調べはついているんだから、覚悟しなさい。美咲は車椅子を反転させると、目的の病室に向かって移動する。
「望~」
美咲は勢いよく病室の扉を開けると、そこに行けば、いつも見ていた頼りない笑顔が見られると思っていた。また、山葵味のスナックでも食べているんだろうと思っていた。
でも、そこには、誰もいないベットがあるだけだった。
「えっ・・・」
美咲は言葉を失う。いつもいると思っていたのに・・・、
窓の外には青い空が広がっている。ベットは綺麗に整えられ、次、誰が来てもいいようになっていた。ベッドの横の戸棚には何も残っていない。
「旅の途中で怪我しただけだからね」
望の言葉を思い出す。そう言えば旅の途中だったんだ。
「ドジねぇ~、旅に来て怪我なんて、馬鹿よ、馬鹿」
私、何度も「馬鹿」って言ったっけ。私って可愛いところのないな。
「馬鹿、馬鹿、ばか、ばか、望のバァ~~カ~、何で黙って行っちゃうのよ・・・・・、少しぐらい待っててくれてもいいじゃない」
美咲は病室に向かって、泣きながら叫ぶ。
「何で、待っててくれないのよ。こんなに可愛い子がいるのに、どうして黙って退院してるのよ」
美咲はうつむきながら、嗚咽を押し殺す。
病室に美咲の嗚咽が響き渡る。静かな病室に伝わる声は、寂しさを冗長していく様に感じる。
「ばかの×5回とは、酷いんじゃないか?」
聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。美咲が振り返ると、そこには白衣を着た望が立っていた。
「ちょっと、なんでここにいるのよ」
「いやぁ、ちょっと、泣き虫の女の子がいるって聞いたからさ」
「誰が泣き虫よ」
「僕の目の前にいます」
美咲はフラフラする足で立ち上がると、望に駆け寄る。
「もう、意地悪、意地悪、いじわる!! こんなに可愛い子泣かせて、どういうつもりよ」
主人のいなくなった車椅子がゆっくりと壁にぶつかる。美咲は望に抱きつくと、何度も望の胸を叩く。
「そうだね。ゴメン」
望はそっと美咲を抱きしめると、美咲の手の力が抜けていく。
「美咲・・・よく頑張ったね」
「うん・・・でも、これは奇跡じゃないわよ。これは私が絶対に生きるって決めたから」
望は黙って美咲の言葉を待つ。
「だから、奇跡は私が起こした必然なの」
僕は美咲の顔を見て思った。美咲を出会ってから、何か引っ掛かるものを感じていた。笑っていても泣いていても、ドキッとしたときも、何か違うと思っていた。美咲の表情を曇らせていたモノ・・・死への道筋が見えていた。でも、今の彼女には、生き抜こうとする強い意志がある。今日を生きていく力を感じる。もう、彼女の死の道は見えていない。
「わかった、望」
美咲はそう言うと、望の顔を睨みつける。僕は美咲の怒った顔に、わかりましたよと言うと、美咲は何が面白いのか、笑い出す。
「何が面白いんだよ」
美咲は望から離れると、クルリと回りながら、全部、全部面白いのと言う。
「・・・まぁ、いいか。それはそれで」
僕は美咲に隠していた花束を廊下から持ち出すと、美咲に差し出す。青いバラの花束を、
「退院までは、まだあるけど。まずは、手術の成功おめでとう」
美咲は両手にいっぱいの花束を受け取ると、美咲の嬉しそうな笑顔が広がる。僕は、美咲の笑顔を見ながら思う。

そう・・・ぼんやりだけど、僕はこの絵が見たかったんだと思う。 たった一人の笑顔だけど・・・。


 第一部 終

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