月のかけら

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また、あしたね2 ~春~ その2

また、あしたね

また、あしたね 目次



小説「また、あしたね」第二部 ~春~ その2



金曜日の午後、病院のロビーは患者の人達でいっぱいだ。季節は、春には少し早い。まだまだ、風邪の症状をした人がたくさん病院に来ていた。患者の人達は少し元気がないが、お見舞いに来た人達は、楽しそうに会話を楽しんでいる。
病院のロビーのドアが開く。気圧の差で外の冷たい風が、病院内に入り込む。開いたドアから、一人の女の子が入ってくる。明るめの藍色を基本にしたブレザーに、胸元の赤いリボン。チェック模様のフレアスカート姿だ。高校の制服に見える。でも、近頃にしては珍しく、リボンをキッチリと胸元まで結んでいる。女の子はゆっくりと、上品な歩き方でロビーまで来る。辺りを見回す。
女の子が病院のロビーの中央まで来ると、周りの男性陣がざわつき始めた。元気の無い患者も、お見舞いに来ている人も、ロビーでキョロキョロしている女の子に注目する。
「おいおい、あれ誰だよ。めちゃめちゃ可愛いぞ」
「すげぇ~超レベル高いな」
「足細いなぁ」
「可愛い~」
女の子は注目を集めていたが、本人は気にしていないようだ。ロビーを何度か見渡すと、「あっ」と小さな声を出す。嬉しそうな表情を浮かべると、走り出す。綺麗に揃えられた髪は、今時の女の子らしく茶色に染められている。両耳の少し上で髪を少し縛り、小さなツインテールが走るたびに、小さく揺れる。ロビーの男性陣は彼女の後ろ姿を見送る。
「無理無理、もう予約済みだよ。あの子は」
「なんだ、彼氏持ちかよ」
「彼氏持ちと言うより、彼女に言わせると、奴隷らしいぞ」
「何それ、もしかして性格は悪いの」
「さぁ、付き合った訳じゃないしな。でも、彼氏を奴隷扱いだしな」
ロビーで話をしていた男性陣は、女の子が走っていく先をみる。
「綺麗なものにはトゲがあるって言うけどな。奴隷は無いよな」
女の子はロビーの奥の中庭につながるドアを開けていた。女の子は中庭のドアを開ける。中庭中央、噴水前のベンチに座っている白衣を着た男性に向かって手を振る。
「望~」
白衣を着た男性は、山葵スナックの袋を手にしている。ベンチには飲みかけの、烏龍茶のペットボトルが置いてある。声をかけられた男性は、噴水をみているように見える。ゆっくりと、数回、頭が揺れている。どうやら、寝ているようだ。
「こら、望」
女の子は病院のドアを閉めると、ベンチに座っている男性まで、走ってくる。走ってきた、勢いのまま、後ろから抱きつく。男性は抱きつかれたままベンチから、転がり落ちる。
「痛いなぁ~、もう、何度も言わせるなよ」
男性は、ゆっくりと起き上がる。背中に柔らかい重みを感じると、顔を少し赤らめる。
「こらぁ~こんなに、可愛い子が声かけてるのに、返事ぐらいしなさいよ」
女の子は、男性の背中に抱きついたまま、後ろから話しかける。
「ホントに可愛い子は、自分のことを『可愛い』とは言わないぞ」
「そんな事無いわよ。私ぐらいになればね」
「それに、どこにいても抱きつくこともしないと思うぞ」
「そんな事無いわよ。私と望の仲ならね」
「美咲ちゃん、僕たち、いつから、そんな仲になったの」
美咲は望の背中から降りると、望の前に回り込むと、満面の笑みを浮かべながら、
「出会った瞬間からよ」
「・・・ちなみに、言葉表すと」
「ご主人様と、ド・レ・イ」
美咲は嬉しそうに、指を左右に振りながら答える。
「あっ」
美咲は僕の腕を見ると、申し訳なさそうに顔をする。僕は美咲の視線の先をみると、抱きつかれて転んだときだろうか、腕をすりむいていた。
「大丈夫だよ。これぐらいの怪我」
「でも・・・、ごめんなさい」
美咲は素直に望に謝る。普段、強気な言動や、積極的な行動が目に付くが、自分が悪いと感じる気持ちがある。美咲の純粋な気持ちが、ただ嬉しかった。でも、美咲のすまなそうな姿をみると、落ち込ませている自分が悪い気分になる。
「大丈夫、大丈夫、唾つけておけば治るよ」
「ウン、でも、手当てさせてよ」
美咲はそう言うと、腕の傷口の汚れをハンカチで取ると、傷口に顔を近づける。
「血が止まらないね」
美咲はそう言うと、傷口に自分の口を重ねる。美咲の行動に僕は、再びビックリする。
「・・・美咲ちゃん」
美咲の舌が、傷口をなめている感覚が伝わってくる。
「えへへ、これで綺麗になったよね」
美咲は、ちょっと、恥ずかしそうに顔を上げると、自分の鞄からバンソウコを取り出す。望の傷口にバンソウコを貼り付ける。
「はい、これで大丈夫だよね」
「ありがとう」
「どうも致しまして・・・・・ねぇ、今日の約束覚えてる」
「覚えてるよ」
「じゃ、診察終わったら、夕方にもう一度くるからね」
今日は、週一回の美咲の診察日だ。美咲は、先月に大きな手術をしたばかりだ。元気そうにみえても、まだ、経過をみておきたい。各務先生は、大丈夫だろうと言っているが、念ためにだ。
「はいはい」
「ハイは、一回でよろしい」
美咲は人差し指を立てながら言ってくる。
「一七時に病院の前で待ち合わせ。その後、映画と食事だろ」
「よろしい。じゃ、また、後でね」
「ああ、診察時間に遅れるなよ。各務先生がこれだぞ」
僕は、人差し指を立てた両手を耳の上に乗せる。美咲は笑いながら、わかってると返事をする。僕は美咲に「また後で」と言うと、美咲は嬉しそうに手を振ると、病院のロビーに向かって走っていった。
美咲を見送ると、僕はスナック菓子の袋をあけると、スナック菓子を食べ始める。ツンと鼻に辛さが伝わってくる。
「きくなぁ~」
僕は烏龍茶を手に取ると、辛さを中和するため烏龍茶を飲んだ。
「変わったもの食べてるわね」
隣に、いつの間にか神咲さんが立っていた。
「もう大丈夫なんですか、美喜さん」
彼女は少し怪訝な顔をする。
「大丈夫よ、ただの二日酔いだから」
「二日酔いじゃ、ありませんよ。軽いですけど、急性アルコール中毒です。それに、まだ、退院許可は出してませんよ」
「そんな、大げさな事無いでしょ」
「そんな、大げさなことです」
「そうなんだ」
彼女は、そう言うと僕の横に座る。
「もう一つ聞いていいかな」
「いいですよ。答えられることならですけど」
「それなら、大丈夫よ。聞きたいのは、あの子は、先生の彼女なの」
「たぶん、違いますよ」
「あら、あっさり答えるわね」
「まぁ、美咲ちゃんは、僕の患者さんで、彼女は、高校生ですからね」
「そうなの、先生は、思って無くとも、彼女は、彼氏と思ってるんじゃないの?」
「それはありません。僕は美咲ちゃんから『ドレイ』呼ばわりされますからね。彼氏を普通、『ドレイ』って呼ぶ子がいますか。まだまだ、恋愛ごっこですよ」
言われてみれば、そうかもしれない。でも、それなら、なぜ、デートの約束をしているのだろうか。恋愛ごっこと言って、遊びで付き合ってるいるのは、ヒドイと思うけどと聞いてみる。
「美咲ちゃんに、ホントに好きな人が出来るまでの代理ですよ。あの年頃の子は年上の人に、あこがれるじゃないですか」
ホントにそれだけなのだろうか?少し納得がいかない気分だ。
「それだけですよ。そろそろ病室戻ってください。午後の回診がありますからね。そこで、問題なければ」退院できますよ。僕も昼休み、終了ですから」
「あっ、ちょっと、待ってくださいよ。もう、ひとつだけ聞いていいですか」
「手短にお願いします」
「・・・聞きにくいんですけど」
「はい?」
「あの、その、私、昨日の晩、先生達に恥ずかしいことしませんでしたか?」
何だ、自分でも自覚あるのか。それなりに恥ずかしい事したと言えばしていている。
「ああ、ちょっと、ありましたけどね」
「やっぱり、ですか、ごめんなさい。先生が私のことを『美喜さん』って呼んだから、たぶん、何かしたんだろうと、わかったですけどね。私、その、ちょっと、酔うと少し大胆になるみたいで、私、何しました」
何かしましたと聞かれても、『あなたに襲われました』とありのままを言うわけにいかないだろうと思う。僕は、ショックを受けないように、オブラートに包んで、昨日病院に運び込まれてからの彼女の行動と言動を教える。
彼女は真っ赤になりながら、僕の話を聞くと、
「ごめんなさい。早く忘れてください」
恥ずかしそうにしながらも、何度も何度も望に頭を下げると、病室に戻っていた。


美咲の(勝手に)テーマ曲



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