月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

また、あしたね2 ~春~ その5

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第二部 ~春~ その5


朝の回診が終わり、僕は休憩室に腰を下ろす。休憩室の窓からは、道路沿いに社会人、学生達が通勤、通学姿がみえる。女子高生の制服姿をみると、昨日、各務先生に言われた言葉を思い出していた。『どっちが好みだ・・・』でもなぁ、どうすればいいのだろうか?
「さすがエロエロゲス野郎は、朝から見ているものがエロイな」
噂をすれば、悩み事を投げかけてきた本人がやってきた。
「何言ってるんですか、各務先生」
「ほうぉ~なかなか、大きいな彼女は」
オイオイ、この病院の休憩室は三階。病院から、道路沿いまでは三十メータはある。僕の視線が女子高生を見ているのがわかったとしても、ピンポイントに胸を見ていたなんてわかるわけ無い。イヤ、胸を見ていた訳じゃない。
「私は、大きいとしか言ってないぞ。この巨乳好きめ」
そう言うと、各務先生は自分の胸の前で腕組みをする。当然、各務先生の胸が寄せて上げて強調される。当然、僕の視線は、各務先生の胸元に注目がいってしまう。僕だって、男だ。
「ほら、見ただろエロエロ望先生」
クソ、また、はめられた。
「男って、悲しい生き物だな。本能的に視線が追ってしまうからな」
「そんな訳無いでしょう」
僕が反論しようと思うと、胸ポケットのPHSが呼び出し音が鳴り響く。僕はすぐにPHSを取り出すと、着信ボタンを押す。看護師から状況を聞くと、僕はPHSを受話器ボタンを再び押す。
「各務先生?」
僕は先ほどまで、話をしていた各務先生を探す。
「さすがに、逃げ足は速いなぁ~」
僕は、各務先生を連れて行くことを諦めると、看護師から呼び出しのあった病室へ向かった。


「望先生、見てくださいよこれ」
僕が病室にたどり着くと、病室の様子がスッカリ変わっていた。白いベッドに、小さなテレビと、戸棚、テーブルと小さいながらも、質素で落ち着きのある個室は、病院内でも評判が高かった。その個室に、仕事の資料がパンパンに入ったファイルが数冊、ノートパソコンが二台、ネットに接続する無線LAN機器が持ち込まれている。そして、どこから持ってきたのか、椅子を並べて、仕事を進める男性と女性が一人ずつ、病室に入り込んでいた。
「美喜さん、いったいなんですか? これは」
「あっ、望先生」
「これは何ですか、これは」
「見てわからない? 仕事しているの。どうしても、明日中に仕上げないといけない案件があるのよ」
「あのね。美喜さん、ここは病院で美喜さんは患者さんです」
「大丈夫ですよ。二日酔いなんて病気の内に入りませんから」
「二日酔いじゃなくて、アルコール中毒です」
神咲は望に返事をせずに、部下に指示を進める。書類に赤字で添削、追記を繰り返し、パソコンの画面に表示されたメールに読むと、再度、望に向き直る。
「さっきも言ったけど、どうして今日中に仕上げないといけない書類があるのよ」
「僕も、先ほどいいましたけどね。美喜さんは、まだこの病院の患者さんです。極端な事はいいませんけど、病室で仕事は許可できませんよ」
「私も譲れないわよ。この仕事は、他部署も狙っているのよ。今日中に仕上げて報告をいれないとダメになるかもしれない」
「どんな理由があろうと、だめですよ」
僕は医者としての立場で主張を繰り返すと、神咲は営業としての立場で主張を繰り返した。どうみて収まりそうにない状態に、居合わせた看護師がオロオロとする。もう、次は手が出ると感じる緊張感がただよう。しかし、張り詰めた緊張感は、あっさりと消え去る。
『ゴン』と言う音とともに、僕は頭を押さえて床に座り込む。
「おっと、ゴメン、ゴメン。大丈夫か」
床をコロコロと転がる音がする。僕は床に転がっている丸い物を見る。
「・・・缶・・・コーヒー」
各務先生が、床に転がった缶コーヒーを取ると、僕に手渡す。
「すまないな。ちょっとクールダウンが必要だろ」
クールダウンで、頭に缶コーヒーを投げてくる人は僕は知らないぞ。
「まぁ、そう言うな」
各務先生は、そう言うと、ベットの上で仕事をしている神咲に歩み寄る。
「神咲さん、ここは病室です。体と心を休める場所ですから、仕事は遠慮していただきたい」
「でも・・・」
「今日中に仕上げる仕事がある事。それは、あなたには、わかっていたはずです。なら、昨晩、お酒をひかえることも出来はずです」
「それは・・・」
自分の自己管理が出来ていない結果、今、病院のベットにいる。その結果を受け入れろと、各務先生の目が無言の圧力をかけている。目は口ほどに物を言うとは、この事だろうと思う。
「理解していただけました。でも、私も鬼ではありませんから、時間を区切って許可します。後、二時間だけです。12時には仕事をかたづけてください」
「わかりました」
各務先生の采配で、二時間だけ仕事の許可が出る。神咲さんは、仕事を二人の部下に指示を始める。各務先生は看護師に、いくつかの指示をすると、病室を後にした。僕は神咲さんの様子を見ていたが、特に問題は無いだろうと思い、僕も病室を後にした。


「こまった上司ですよね」
僕が中庭のベンチに座っていると、神咲の病室で仕事をしていた部下の女性が話しかけてきた。仕事の手伝いが終わり、会社に戻るところのようだ。
「まぁ、患者さんのことを悪く言うのは、気が引けますけどね。あそこまで仕事に入れ込まれると、困りものですよ」
僕は昼間の美喜さんを思い出すと、隠さずに部下の女性に言う。
「そうですよね。アルコール依存症で、病室に仕事を持ち込むし、あれで、上司って言うから始末に悪いです」
「美喜さん、会社でも評判悪いの」
「・・・良いようで・・・悪いようでも・・・ありますよ」
彼女の返事に少し、間があった。
「何か、思うところでもあるの」
僕は彼女に神咲の事を聞いてみる。
「一応ですけど、私は、神咲さんに憧れて、この会社に入ったから」
「へぇ~」
「あの酔いつぶれた姿から、想像もつかないですよね」
「確かに」
「私・・・数年前に就職先を決めることに、ずいぶん迷っていたんです。その時に、卒業生の母校訪問って言う講演会があったんですよ。そこで、神咲さんの「女性の仕事と私」って題目で聞いて、感動したんです。
神咲さんは、女性だから、この仕事をする。男性だから、この仕事をするって枠にとらわれずに、自由に出来ることをする。私だから出来ることを、作っていくのが私の仕事だって言っていたんです。そんな仕事の仕方を講演会で語っていました。だから、私は神咲さんの話に憧れて、今の会社に入ったですけどね」
「憧れていた人の下で働くことが出来たわけだ」
「そうですね。働くことは出来ました。でも、ホントに尊敬出来たのは、入社前だけです」
「どうして」
「今は、ただの酔っ払いですから」
「確かに・・・二日続けて、お酒で病院に来る人はいないなぁ~」
彼女は笑うながら、うなずき返す。
「では、神咲さんの事、よろしくお願いします。お酒におぼれないでいい薬があれば、是非、処方してください」
「あればね」
「では、お疲れ様です」
僕は挨拶を返すと、彼女を見送る。お酒におぼれない薬か・・・。僕は、何度か繰り返すと、病院に戻ることにした。

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