月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

また、あしたね2 ~春~ その6

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第二部 ~春~ その6



 今晩の当直に備えて、夕方から宿直室で仮眠をしていた。
トントンと、体を叩かれる感覚に僕は、目を少し開ける。
「先生、仮眠中にすいません。ちょっと、協力して欲しいことがあって」
看護師は、すまなさそうな顔をしながら事情を話しを始める。僕は聞き終えると、小さくため息をついた。昨晩、二日続けて病院に運び込まれた神咲さんが、病室からいなくなったらしい。
僕は昼の検診で、神咲さんの退院許可を出さなかった。正直言えば、退院してもらうことも出来たが、二日続けてアルコール漬けだったことを考え、今晩はお酒を飲めないようにと思って、もう一日入院してもらった。でも、病室に消えたと言うことは裏目に出たらしい。
看護師に探した場所を聞くと、自宅と会社に電話するように伝える。後、手の空いている人がいたら、近所のコンビニに神咲さんがいないか、確認に言ってもらうように言う。看護師が仮眠室から出て行くと、僕は神咲さんが行きそうな場所を考えると、立ち上がり仮眠室を出る。


 僕は目的の場所に来ると目の前にあるドアを開ける。ドアを開けると、そこには街の明かりが見える。ここは屋上だ。周りを見ると、ひとりの女性がいるのが見えた。

 ・・・弐

「何してるんですか?」
僕は女性に声をかける。
「どうして、ここがわかったの」
「何となくですけどね。灯台もと暗しですよね。それと、ここが一番、街が綺麗に見える場所ですからね。僕の特等席のつもりだったんですけど」
「それは、それは、独り占めはいけないわよ」
そう言うと、女性は手に持っていた缶を口に持ってくる。
「美喜さん、やっぱり飲んでますよね」
「ちゃんと、節度を持って飲んでますよ」
神咲は下を指差す。望は指の先をみると、缶ビール350mlが三本転がっている。すでに、二本はカラだ。
「まぁ、二本までなら、許しますよ。でも、三本目は許しません」
僕はそう言うと、残り一本のビールを手に取ると、プルトップを引き上げて戻す。プシュと音がする。僕は缶ビールを飲む。
「いいのかなぁ~勤務中でしょ」
「それを言えば、美喜さんは入院患者ですよ」
「それは、その通りです」
「で、美喜さんは、ここで何を」
「ちょっとね。私は何やってるんだろうと思ってね」
「・・・? 夜景をつまみにビール飲んでますよ」
「そういうことじゃなくて」
「大学卒業して、今の会社に入社して頑張ってきたけど。今の私には何が残ってるのかなぁ~と考えちゃって」
「難しい事聞きますよね」
「そう・・・かな。たまに思ったりしない。私はなぜ生きているのかなぁ~とか、今、死んだら楽になれるのかなぁ~とか、思わない?」
「そうですね。思うことはありますよ。でも」
「わかるじゃない・・・最後の『でも』が気になるけど」
「美喜さんは、わかってる・・・と思いますけど」
「・・・でも、悲しむ人がいるから・・・出来ないわよ・それに両親にも悪いしね」
「ですよね」
「でも、でもね。やっぱり、何度か考えちゃうわよ。私は仕事ばっかり続けてきたけど・・・」
「仕事が中心でもいいじゃないですか?」
「それがね。最近、街で同級生に会ってね」
「同級生」
「そう、同級生。私の友達は、ほとんど結婚して、今は子育ての真っ最中。仕事しているのって私ぐらい」
美喜はそう言うと、缶ビールに飲み干すと。缶を床に置く。
「その同級生に会ってね。久しぶりだから、お茶したの。その時に聞かれたのよ『女としての幸せ?』って、昔なら即答できたけど」
「・・・答えられなかった訳ですか」
「そうよ。昔なら即答できたんだけどね。女としても幸せだし、仕事も充実してる。何も問題ないって言えたわ」
「それが、言えなくなった」
「そう、なんで何だろうって、思って、気がつくとお酒を片手している日々って訳」
「悩んでいる訳だ」
「そう、昔の私と、今の私。いったい何が違うかな。それとも、何かを無くしちゃったのかな」
美喜はそう言うと、屋上の手すりにもたれかかる。
「じゃ、確かめて来なよ」
「どうやってよ」
「戻ればいいんですよ」
「何言ってるのよ。時間は戻せないわよ」
「そうでもないですよ」
 望はそう言うと、神咲を肩を少し押す。手すりにもたれかかっていはずの神咲の体が、突然、ふっと軽くなる。あるはずの柵はなくなり、体が屋上から落ちていく。
「嘘でしょ」
神咲は重力に引かれていく感覚に包まれる。一瞬のはずの時間が、ゆっくりゆっくりと感じられる。まだ、やり残したことがある。まだ、死ぬ訳にはいかない。まだ、死ぬ訳にはいかない。神咲は必死にもがくが、空中ではどうすることも出来ない。もうダメかもしれないと神咲は思う。
まだ、やり残したことはいっぱいある。美味しい料理も食べたい。仕事ばかりで、海外旅行だって、一度もしていない。それに、結婚だって、まだ、諦めたつもりはないし、自分の子供を、この手で抱きしめたい。それに、仕事も、まだまだ途中のものある。教えてないことだって、いっぱいある・・・。いっぱい・・・・・。

 何でなんだろう・・・もう最後かもしれないのに・・・何で、私は仕事の事を・・・思い出すのよ。

神咲の視界がゆっくりとゆがんでいく。そして、大きな音と衝撃とともに神咲の意識が途切れた。


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