月のかけら

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また、あしたね2 ~春~ その7

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第二部 ~春~ その7



「ほら、神咲」
ネクタイ姿の男性が、女性にハンカチを差し出す。ハンカチを差しだした先には、女性が机にうずくまっている。
「もう飲めないわよぉ~」
女性は差し出されたハンカチを、少しみるとその手をはねのける。
「お前なぁ~いつまで寝ぼけてるんだ。もう、昼休みは終わったぞ。すぐ顔を洗ってこい」
え、仕事中・・・。私は病院で、お酒を飲んでいたはず? 神咲は、ゆっくりと起き上がると、自分を見る。スーツ姿だ。ちょっと、スーツのデザインが若い様な気がする。顔を上げて、周りを見ると、そこには同期入社の営業の桜木が、困ったように顔をしながら、私をのぞき込んでいた。
「どうだ、少しは目が覚めてきたか?」
「桜木主任?」
「お前何言ってるんだ。俺が主任なわけないだろう。神咲と同期入社の営業担当だよ。まだ、夢の中にいるのか?」
「へっ」
そう言われれば、桜木主任の姿が、スゴイ若い様な気がする。でも、どうして? 私は病院にいたはず。それが、病院のベッドも無ければ、看護師の姿もない。キョロキョロと周りを見ると、いつの間にか、会社の自分の机に座っている。
「ほら、ちょっと、顔洗って化粧直してこい。一三時から客先訪問いくぞ」
桜木は、口元を指さしながら、十分後に社を出るぞと言う。私は訳がわからないまま、言われたとおり、トイレに駆け込む。
「どうなってる」
トイレに入ると私は鏡をみる。そこには、今の自分にはないピチピチした肌が映っている。口元をみると、白い跡がついている。ヨダレの跡だろうか。神咲は水道の水を出すとハンカチを濡らし、鏡を見ながら口元をぬぐう。
「・・・肌が・・・十台のころみたい。でも、なんで」
何があったのだろう。自分は病院の屋上でお酒を飲んでいたはず。そして、望先生に押されて、屋上から、落ちたはず・・・。これは、夢なんだろうか? 納得がいかない。神咲は不思議に思いながらも、トイレを出る自席の戻ると、桜木が待っていた。
「営業先に行くぞ」
「あっ、はい」
神咲は席に戻ると、机の引き出しの開ける。
「ほら、鞄と資料持つ」
机の引き出しには、入社した頃、これからガンガン頑張るぞと思って買ったお気に入りの鞄と、ショッピングモールのチェックの紙袋が置いてある。神咲は鞄と紙袋を手に取ると、すぐに桜木の後を追いかけた。
 電車と徒歩で一時間ほどすると、目的の営業先までたどり着いた。途中、何度も疑問に感じたが、どうやら、ここは入社した頃に、桜木とペアを組んで仕事をしていた頃のようだ。過去に戻れる訳がない。だったら、これは夢・・・だろうと、神咲は思い始めていた。
「いいか、次の会社は絶対に落とせないぞ。ここ数ヶ月、俺とお前で地道に積み上げてきた商談。今日は俺がサポートに回る。お前が決めてこい」
「はぁ・・・はい」
「何だよ、そのやる気のない返事は」
神咲は会社の看板をみる。ここは私、昔、大失敗をした場所だ。やっぱり、これは夢だ。屋上から落ちて、大怪我をして自分は寝ているんだ。
「任せてください。絶対に落として見せますから」
そうだ。夢なら好きにしてもいいよね、と思うと気持ちが軽くなってきた。今の私なら、この程度の商談なら、楽勝だ。
「おっ、言うな。じゃ、いくぞ」
「はい」


 自信たっぷりで乗り込んだ客先。商談は順調に進んでいた。しかし途中から、資料を他社と間違えたまま話を進め、失敗に終わってしまった。私は、会社に戻ると、休憩室で座り込んでいた。私は何であんな失敗したんだろう。今の私なら考えられない間違いだった。ちょっと、ショックだった。
「何、黄昏れているんだよ」
後ろを向くと、桜木が缶コーヒーを差し出してきた。私はお礼を言うと缶コーヒーを受け取る。
「似合わない後ろ姿だな」
「たまには、落ち込むこともあるわよ。大事な商談を失敗したのよ」
「そうか、今日の客先は、ライバル会社のお得意さんだ。入社の二年目の俺たちが何とか出来る訳、無いだろう」
「それでも、私が勢いに任せて、あんな事、言わなければ・・・」
「まぁ、お前の間違いが無くても、結果は変わらないよ」
「そんなこと無いわよ。もしかしたら・・・、もしかしたら・・・」
「もしかしたらは無いぞ・・・仕事は結果がすべてだ」
「そうだけど」
「だったら、いつまでも引きずっても仕方ないよ。やってしまったことは、素直に認めるて、次につなげる事を考えろよ」
「・・・ウン」
この商談は二人で数ヶ月かけて、築いてきたものだ。そう思うと、やはり悔しかった。そして、どうしてだろう、あふれてくる涙が止められなかった。
「神咲・・・入社してから、何回、泣いているんだ」
神咲は泣きながら桜木を見る。でも、目を合わせることが出来ずに、神咲は視線をそらしてしまう。
「うるさいわね。ほっといてよ」
私って、こんなに泣き虫だったんだ。
そうだった。入社したての頃、何度も、何度も失敗していた。でも、いつも桜木が、私を支えてくれていた。そして、いっぱい、いっぱい、泣いていた。失敗をした時の気持ち。上手く仕事をまとめられたときの気持ち。悔しかった気持ち。嬉しかった気持ち。それに、自分を支えくれてきた仲間がいたこと。
ずっと、大切すると思っていた事。バリバリ仕事が出来るようになって、昇進しても、この気持ちは忘れずにしたいと思っていた。でも、スッカリ忘れていたような気がする。
 今では部下の手前、泣くことも無くなっていた。いつもいつも、仕事に追われ、時間に追われ、いつの間にか、自分の立場ばかりを考えていた。忘れずにいたいと思っていたことが、思い出せないようになっていた。
でも、思い出せた。夢の中だけど、この気持ちを思い出せたことは、よかったと思える。
「そう思うなら、そろそろ、帰る時間だぞ」
「帰る時間?」
神咲は、何を言っているんだろうと思うと、桜木が神咲の肩に手を置く。
「何?」
「じゃ、がんばれよ神咲」
桜木はそう言うと、桜木は神咲を突き飛ばした。
神咲はバランスを崩すと、後ろに数歩下がりながらバランスを立て直そうとする。でも、その頑張りも数秒で終わる。神咲はバランスを完全に崩すと、後ろ向けに倒れる。
神咲は倒れた衝撃が来ると身構えるが、突然、体が、ふっと軽くなる。あるはずの床がなくなり、体が暗い闇に落ちていく。神咲は、病院から落ちたときと同じ感覚を感じる。
前は病院から落ちていくのがわかった。今度、会社のビルから、落ちていくのが見える。
「えぇ~~・・・。また、落ちるの」
今度こそ、死ぬのかなと思うと、神咲の意識は、ゆっくりととぎれていった。


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