月のかけら

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また、あしたね2 ~春~ その8

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第二部 ~春~ その8


「・・・」
見慣れない天井が見える。どうやら私は寝ていたようだ。
「ここは?」
「おっ、気がついたか神咲」
見慣れた顔が天井の前に見える。
「・・・桜木、どうしてここにいるの、私はビルから落ちたはず」
「どうして、ここにいるのじゃないよ。また、寝ぼけてるか」
「えっ」
そう言われると、同じような事があった気がする。慌てて周りを見てるみると、テーブル、テレビがある。テーブルの上には花瓶が置かれ、鮮やかな黄色の花が飾られている。どうやら、ここは会社ではないみたいだ。
自分の胸元を見ると、白い薄手の布団がかぶせられている。ゆっくりと起き上がると、周りがよく見えてきた。自分はどうやら、病院のベッドで寝ていたみたいだ。そしてベットの隣の椅子で、『お前、大丈夫か』と言わんばかりに顔をしている桜木がいる。
「病院に入院してると聞いたから、駆けつけてみれば、酒の飲み過ぎで入院はないだろ」
「悪かっ・・・・・ごめん・・ない」
私は桜木の売り言葉に思わず、喧嘩腰の返事をしそうになるが、思いとどまると素直に謝る。
「どうした。神咲・・・まだ、熱でもあるんじゃないか? お前の口から『ごめんなさい』の言葉が出るはずがない。すぐに、先生呼んで・・・」
桜木は神咲に顔を見ると、目を丸くして言う。
「大丈夫よ。病気って訳でも無し。それに、ちょっと、その顔を驚きすぎじゃない」
「そうか、これは、きっと雨が降るぞ」
桜木は窓の外を一度見ると、神咲の顔を見ながら言う。
「ちょっと・・・それは酷いんじゃない」
私は、謝ったことを少し後悔し、少し反抗的な返事を返した。
「そうか、俺は、ここ数年で、一番驚いたぞ。今日みたいな素直な神咲は」
「そんなこと無いと思うけど」
「イヤイヤ、ここ数年のお前は、トゲトゲしていて、話しかけにくかった」
「そうかな」
「・・・そうだよ」
「・・・・・・・そんなことないよ」
そう言うと桜木は立ち上がると、窓を開ける。神咲に背を向けたまま、再び、桜木が話し始める。
「そんなことない・・・か、・・・でも、今のお前見てると、思い出したよ」
開けられた窓から、春の暖かな風が頬をなでていく。
「何を?」
「二人で営業していた頃を・・・な」
桜木は窓に手をつくと、外を見る。病室の窓からは、中庭が噴水が見える。春の陽気に、入院患者達が集まっている。白衣医を着た医者が、女子高生らしい子に抱きつかれて倒れ込んでいるのが見える。桜木はその姿を笑いながらみている。
「何年前の話してるの」
私は、突然何を言い出すのだろうと思う。
「そうだなぁ~、そろそろ十年ぐらいだよな。一緒に仕事していたのは」
「入社した頃だったかな」
「そうそう、そして、あの頃の神咲は泣き虫で苦労したぞ」
桜木は昔を思い出すと、嬉しそうに話をする。
「そんなに、泣いてませんよ」
私は、顔が真っ赤になるのを感じると、必死に否定をする。
「イヤイヤ、何度この胸の中で泣かれたことか」
「何言ってるんですか、そんな事していませんから」
「そうだったか?」
桜木はワザと、疑問があるような顔をする。
「そうよ」
私は、絶対にないわと言わんばかりに、少し怒り気味に返事をした。桜木は、そんな私の顔を見ると、『わかった、わかった』と笑い出す。そんな桜木をみると、私は絶対に桜木が面白がっていると感じる。
「でも、あの頃は、がむしゃらに仕事に取り組んでいるだけで、よかったからな。何もしがらみもなく、誰にも・・・」
「今は違うの」
「違うだろ。後輩がいて、部長がいて、課長がいて、みんなが期待をしている。その期待に応える事が当たり前になってる。もう、昔みたいに後先を考えない仕事は出来ない」
「そうだね・・・私も・・・」
「それに、学生の頃は、大人になるって事が、よくわからなかったけどな」
「今なら、私も、ちょっとはわかる気がするわ」
「だな、入社したての頃、絶対に今の上司の様にならないぞって、思っていたけどな。でも、今は、なりたくなかった上司になってる。自分の立場と、建前を優先している自分がいる」
「人と人の距離の取り方、建前と本音の・・・バランスを取るようにしているのは、自然な事じゃない」
「俺も、そう思うよ。その距離の取り方、バランスの取り方が、うまくなる事が大人になるって事だと感じてる」
「確かにね。そう言う意味なら、私はまだまだ、ダメだわ。後輩の前では、いいことだけを言っているけど、実際の仕事は、いつも綱渡りしてる。桜木ほど、うまく出来てない」
「まぁ、そう思うなら、改善していくべきだな」
「そう思うわよ。思うけど、それが難しいのよ」
そう言うと、再び、桜木が顔を近づけてくる。私は、驚きながら、ベットのシーツで顔を隠す。顔に火照りを感じる。
「神咲・・・やっぱり、大丈夫か?熱でもあるんじゃないか?それとも、酔った拍子に頭を打ってないか?」
「なんで、そうなるのよ」
「だってさ。今のお前、入社した頃のようで可愛いぞ。昔の俺なら、惚れてたぞ」
そう言うと、桜木は窓を閉めると、『また明日な』と言うと病室を出て行った。桜木が出て行ったあと、神咲はベットに倒れ込む。病院の天井が見える。
まだ、顔に火照りを感じる。ずっと、昔に諦めたはずの気持ちが、胸を締め付けてくる。
「もう・・・遅いわよ、あなたには奥さんも子供もいるでしょ」
小さな声で、神咲は独り言を言う。

「私・・・今日は泣いてばかりだな」



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 小説 また明日ね・・・

- 1 Comments

タミリン  

No title

妻子ある人に言われてもね。。。

2011/10/07 (Fri) 12:05 | EDIT | REPLY |   

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