月のかけら

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小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その1

また、あしたね

また、あしたね 目次



小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その1


 十人ほどの大人が、円状にならんだ机の前に座っている。ここは会議室の様だ。誰もが、難しそうな顔をしながら、目の前に置かれた資料に目を通している。
「では、資料の内容を確認していただけたと思います」
一人の男性が眼鏡のズレを人差し指で直しながら、立ち上がる。男性は立ち上がると、左右の人を見る。
「・・・・・」
誰も男性の言葉に反応せず、資料を見入っている。
「それでは、議題を進めたいと思います」
男性は返事がないことを、肯定と受け止める。男性は席に座ると議題を進めはじめる。
「私は、少しおかしいと感じています」
「何がだね」
男性の質問に、白髪の年長者と思われる男性が質問を返す。
「望先生の事です」
男性は、もう一度、眼鏡のズレを直しながら言う。
「この資料からすれば、優秀な医師に思えるが・・・」
「確かに優秀です。でも、私が調べると、少しおかしな点が見つかりました」
「おかしな点?」
「はい。まずは、彼・・・、望先生の経歴です。家族、親族関係者とは連絡が取れない。そして、前の街での暮らしていたはずの住所。そこはすでに空き地。彼は、早ければ数ヶ月、長くても一年程で引っ越しをしている。調べられた場所では、過去三年・・・どこにも彼が、生活していた痕跡は見付けられませんでした。でも、まぁ、この点については、今回は、深く追求しません」
「では、何が問題なのかね」
「望先生が担当する患者の治療内容と生還率です」
「治療内容と生還率?」
「はい」
「この資料を見ていただければ、わかると思います。まずは、資料の三ページ目・・・」
男性の言葉に、手元の資料をめくる。そこには、患者名、治療内容、病状などが表にまとめられていた。
「ここにまとめた患者は、我々が重篤な症状をもつもの。あるいは、延命治療しか残されていないと考えていた患者です」
男は、資料に書かれている内容を、読み上げると、病状、治療内容、経過を丁寧に説明していく。数十分が過ぎる。話の内容に飽きてきたのか、年長者と思われる男性が机を『コンコン』と叩く。
「周りくどいな、何が言いたいのかね。真田先生は」
「・・・そうですか、では、遠回しに語るのはヤメにしましょうか」
「そう願いたい」
「単刀直入に言えば、彼の担当する患者の生還率は100%です。現代医学は万能ではないことは皆さんが、よくおわかりでしょう」
「・・・・」
「しかし、彼が担当した患者さんは、奇跡的な回復を見せている。我々が助けられないと判断していた患者。手術をしても、余命を伸ばすだけの延命治療しかならないと判断していた患者。それが、彼の手にかかれば、数週間後には、元気に回復してしまう。特に接する機会が多い各務先生・・・おかしいと思いませんか」
質問を投げかけられた彼女は、眠たそうな顔をしている。まるで、この議題には興味がないようだ。
「どう思うのかね、各務先生」
年長の男性は、各務先生の態度を怒ることもなく、質問の返事を待った。
「・・・そうですね。私としては、ただのやっかみかにしか聞こえませんね」
「なっ」
真田先生は、驚きの声を上げながら席を立つ。自分の投げかけた疑問を、『ただのやっかみ』で返された訳で、苛立ちを隠さず声を荒げる。各務先生は、少し時間をおいて静かに返事を返す。
「そうだろ。『自分が助けられない』と思ったから、だから、それが正しいと思うのは傲慢だな。そんな事を考えている暇があれば、医術を磨く努力をすべきだ。特にこんな資料を作っている暇があるなら、論文を読んでる方がマシだ」
「・・・・・」
各務先生の言葉に、真田先生は言葉を返せない。ここにいる全員が、望先生に疑問を感じてはいる。でも、各務先生の言うことも正しい。誰もが結論を出せないまま数分が過ぎていく。年長の男性が立ち上がる。
「確かに、彼の医療技術はすばらしいものがあるようだ。それが、この病院に害をなすものであれば、問題だが・・・、今のところ、そう言うわけではなさそうだ。問題にすることもないだろう」
年長の男性はそう言うと、全員の顔を見る。一人を除いて反論は無いようだ。
「では、この件は、ここまでする。異論はあるかね」
誰も口を開かない。異論が無いことを確認すると、年長者は会議の終わりを告げる。集まった男性達は、無言で会議室を出て行く。
皆が出て行った後、一人の白衣を着た女性が残っていた。女性はゆっくりと立ち上がると、窓の外に見える中庭を見る。噴水の近くのベンチで、一人の白衣を着た男性と、二人の女性が見える。
「本人は蚊帳の外・・・でも、面白そうだな」

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