月のかけら

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小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その4

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その4


「患者の状態は」
処置室のドアを開けると、救急車から運び込まれた患者がベットに移されているのが見えた。僕が処置室に入ると、すぐに看護師の諏訪が駆け寄ってきた。
「患者の内、一人、意識がありません。小学校へ登校中、後ろから来た車に追突されたようです。患者は五名、二名は重傷ですが、意識あり、二人は軽傷で問題ありません。残り一名が、車の下敷きになった様で意識がありません。外傷は右腕骨折、腹部に内出血をしているような痕があります」
諏訪から、運ばれてきた患者の容体を聞くと、僕はすぐに意識のない患者に駆け寄る。
患者は低学年の小学生。意識はなく、看護師の言ったように右腕の骨折、腹部に内出血が見える。腕の骨折は問題なく見えるが、腹部の内出血は内臓をやられているかもしれない。検査をするより、止血を急いだ方がよさそうに思える。
「すぐにバイタル測定、血液検査して、後、あいている先生がいないか確認を」
僕は、緊急手術が必要と考え看護師に指示を出す。
「それなら問題ない」
すぐに返事が返ってきた。僕の後ろに各務先生が立っていた。僕は各務先生に患者の腹部を指さす。
「各務先生、どう思いますか」
「腹部からの内出血があるな、すぐに開腹して止血したほうがいいな。すぐに手術室へ運んだ方がいい」
各務先生は腹部の触診と、バイタルを確認すると、すぐに看護師に指示を出す。
「僕もそう思います」
ゆっくりと処置室の視界が、モノトーンに変わっていく。そして、僕の目の前にる小学生の上に小さな文字が浮かび上がる。文字の色は消えかかり、かすれたような数字が浮かび上がる。
 壱
「まだ、助けられる、諦めるなよ」
各務先生が、そう言うと周りの看護師が『はい』と返事をする。
「・・・」
僕は返事をせずに、小学生の患者を診続ける。頭部の外傷、瞳孔、手を軽く握り反応をみる。いくつかの検査を繰り返すと、僕は気になることを見付けた。
「各務先生、外傷は無いように見えるのですが、ここ、どう思いますか?」
僕は各務先生に、患者の頭部を指さす。各務先生はペンライトを取り出すと、僕の指さす場所を診る。
「頭部のCT検査をしたいところですが・・・」
僕は、そこまで言うと言葉が続かない。頭部のCT検査をする前に、腹部の出血は止めておきたい。でも、頭部は外傷は無いが、僕は、患者の頭部内部に血がたまっていると判断した。そして、それは一刻を争う。CT検査と、腹部の処置をしていたのでは、間に合わない。
「君はどう思ってるんだ」
各務先生は、頭部の観察を終える。僕に問いかけてきた。僕は、素直に所見を伝える。検査無しに、頭部の開頭手術、さらに腹部の出血を止める手術を同時にすべきだと言う。もちろん、そんな馬鹿げた事、出来ないとわかっている。
検査も無しに開頭手術は出来ない。頭部を開頭して、どこにも悪い場所が無い可能性もある。出血のある腹部を優先すべきだと、思う。でも、僕の考えが間違っていなければ、患者の頭の血管が裂けている。
腹部の出血を優先しても、頭の出血が止まらなければ助からない。逆にCT検査を優先すれば、腹部の出血で助からない。助けるには、頭の手術と腹部の手術を同時にするしかない。
「間違いないなら、自分の判断の優先すべきだろう」
僕が悩んでいると、各務先生はあっさりと結論を言う。
「・・・」
僕は各務先生をみる。
「幸い、ここには手術を出来る医者が二人いる」
「いいんですか?頭部を開けて何もありませんでしたでは、すみませんよ」
「なに、私は、この病院では、変わり者だからな」
「確かに、それは、一理あります」
「言ってくれるじゃないか」
各務先生は僕に、デコピンをお見舞いすると、患者に向き直る。
「では、君が頭部の手術を、私が腹部をの担当でいいな」
「あっ、はい」
僕はデコピンをされた額を手で押さえながら返事をする。
「あと、もう一つ、条件がある」
「条件?」
僕は各務先生の質問にオウム返しで聞き返す。各務先生は患者から、視線を僕に向ける。
「頭部の開頭手術の判断は、二人で出した判断と言うことにするぞ」
僕は各務先生の申し出に、すぐに返事をする。
「いいですよ」
各務先生の事だ。自分の評判を上げることは考えていないだろう。だとすると、後々の処理を考えているのだろう。僕だけの判断で開頭手術をしたとなると、その判断に疑問を上げる医師が出るだろう。でも、二人の医者が判断したのであれば、その声も上がらないだろう。
「各務先生・・・ひとが良すぎますよ」
僕は各務先生の意図を感じると、それを素直に伝える。そして、看護師に、手術に必要な指示と、患者の移動を指示する。
「なに、望先生程じゃ・・・無いだろ」
ここで、検査を優先すると助からない。けど、検査を飛ばせば、助けられるかもしれない。しかし、手術が成功する可能性は低い。なら、万全を期すため、検査を優先・・・。どうすればいいのか、
「違いますよ。各務先生・・・これは、医者としての覚悟ですよ」
「覚悟」
「はい、助けられなかった時の言い訳のため、そのための検査なら・・・」
「必要ないと言う訳か」
「はい、今はそう思いますから」
検査無しの手術。失敗すれば、病院からも患者の家族からも非難されるだろう。それはわかっている。でも、それでも、助けられる可能性があれば、それを優先したい。その結果、何を言われてもいいと思っている。各務先生にも同じ覚悟があることを、僕は感じる。
「確かに、いい覚悟だ」
各務先生は僕の背中を叩く。僕は『当たり前です』と返事をする。そして、二人は手術室に向かっていた。


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