月のかけら

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小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その9

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その9


 病室のベッドに小さな体があった。ベットの隣には夫婦の姿と、白衣を着た医師の姿がみえる。女性はベッドに寝ている小さな体を優しく、優しく撫でている。ベッドに寝ている小さな体は、身動きせずに、その優しい手で撫でられている。男性は女性の手を自分の手を重ねる。男性は、女性の顔をみると、ゆっくりと首を左右に振る。女性はゆっくりと立ち上がると、男性に抱きつく。ただ、時間だけが流れていく・・・。二人の微かな嗚咽が聞こえてくる。
 僕は、香織ちゃんの両親に最後の説明を終える。そして、一度、助かったと安心していた自分に苛立ちを覚えていた。あの瞬間に、気を抜かずにいれば、こんな事にはならなかった。もっと、日々、気を配っていれば・・・、もっと、慎重に・・・何度も繰り返し、繰り返し、後悔が襲ってくる。
でも、何度、後悔しても時間は元に戻らない。そんな事は、今まで何度も経験してきたことだ。僕は、ふたりに深々と頭を下げる。そして、無言のまま、病室の扉まで、歩くと、扉のノブに手をかける。『先生』と小さな声が聞こえてた。
「・・・望先生」
僕は扉のノブに手をかけたまま、振り返る。
「最後に・・・笑って、お別れ・・できました・・・ありがとうございます」
香織の両親は、望にむかって、泣きながらお礼を言う。僕は二人の姿をみながら、思った。
『どうして、助けられなかったんだろう・・・』

 看護師が階段を上っていく。突き当たりのドアを開くと、夕方に染まる空が見えた。白いはずのシーツ、洗濯ものが、赤く染まっている。看護師は左右を見ると、一人の白衣を着た男性が見付ける。看護師は白衣を着た男性の後ろまで歩いてくる。
「望先生・・・香織ちゃんが帰られますよ」
「・・・」
望は答えなかった。ただ、病院の屋上から見える街を眺めていた。
「望先生・・・」
再度、看護師は声をかける。
「・・・・・・」
やはり、返事はない。
「いいんですか、先生。香織ちゃんと、お別れしなくていいいんですか?」

 病院に手前にタクシーが止まると、スーツ姿の女性と高校の制服姿の女の子が飛び出してくる。
「お客さん、お釣り、お釣り」
二人の女性が飛び出すと、タクシーの運転席から慌てて運転手が一万円札を振りながら叫んだ。
「お釣りはいいから、取っておいて」
スーツ姿の女性が振り返りながら、返事をする。制服姿の女の子は、病院の入り口で看護師の姿を見付けると、看護師を呼び止める。
「看護師さん、入院している香織ちゃんの病室は、後、望先生は?」
看護師は驚きながらも、病室の番号を答える。望先生の居場所はわからないと付け加える。制服姿の女の子は、すぐにエレベータの前に来るとボタンを押す。すぐにエレベータのドアが開くと、制服姿の女の子はエレベータに乗り込む。
「早く早く」
スーツ姿の女性がエレベータに乗り込むと、すぐに『閉じる』ボタンを押す。エレベータの扉が閉まると、二人の女性は大きく息を吸い込む。エレベータ内にモータとワイヤーの音が小さく響く。
「大丈夫よね。香織ちゃん」
制服姿の女の子が隣にいるスーツ姿の女性に問いかける。
「大丈夫よ、望先生がついてるわ」
エレベータが目的の階へ到着したことを告げると、扉が開く。夕方の時間帯、病院の廊下は看護師と患者さんが数名いるだけで、比較的静かだった。入院患者とお見舞いの人の会話。看護師と医師の会話、テレビの音が聞こえてくる。何も変わらない日常が続いている。
そう、何も変わらない日常だ。この廊下の先に、香織ちゃんの病室がある。そこの扉を開ければ、昨日と同じように、元気な香織ちゃんが飛び出してくる。昨日、友達だよって約束した。元気になって、二人で望先生を追いかけ回すって約束した。だから、大丈夫・・・。
二人は、看護師から聞いた病室にたどり着く。制服姿の女の子は扉の前に立つと、じっと動けずにいる。スーツ姿の女性が話しかけるが、返事がない。しばらく待つと、スーツ姿の女性が、扉を開ける。
病室から、元気に飛び出してくると思った香織ちゃんはいなかった。病室は綺麗に整理され、誰かが入院していた跡はない。
「あれ、部屋を間違えたかな」
スーツ姿の女性は、部屋を間違えたと勘違いする。
「美咲ちゃん、看護師さんは、この部屋番号を言っていたの?」
美咲の顔に、小さな涙が見えた。止まることのない涙は、美咲の頬をつたい、廊下へと落ちていく。美咲は部屋をみると、全てを理解していた。美咲は、この病院で入院生活を一年ほど続けていた。病室のベッドが綺麗になるとき、その訳を美咲は、よく知っている。
「ナースステーションで、部屋番号聞いて・・・」
神咲の言葉は続かなかった。
「神咲・・・さん」
美咲は小さな声を絞り出す。神咲は、美咲の泣き顔を見ると、自分が勘違いしていることに気がつく。病室の綺麗なベッド、美咲の涙、そして、病室の空白の名札。それが意味することを、神咲は感じると、胸の奥から、止めようのない淋しい感情がわき上がってくる。神咲は高ぶる感情を、グッと押さえ込むと、泣き続ける美咲の背中に両手を回すと、そっと抱きしめた。


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