月のかけら

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小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その10

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第三部 ~秋~ その10


「望先生」
看護師は、再度、白衣の男性に声をかける。
「お別れなら、さっきすませてきたよ。それよりも」
「それよりも・・・?」
「どうして、こんな事をしたんだ」
望は街を眺めたまま、看護師に問いかけた。
「どうしてって?」
「始めて、この病院で会ったときは気がつかなかったよ」
そうだ。なぜ気がつかなかったのだろうか。
「・・・望先生、何言ってるんですか?」
「今考えると、始めて会ったときに、どうして思い出さなかったんだろうと思うよ」
望は、屋上の手摺りに手を添えたまま、看護師に向かって振り返る。
「先生?」
「君に前に浮かんだ・・・零の文字」
望は空を見上げると、微かに見え始めた半分の月をみる。
「・・・」
「そして・・・君の名前、月の菜花・・・」
赤く染まった夕焼けの空が、徐々に暗くなり始める。屋上に干された数枚のシーツが、風に揺られて、小さな音をたてる。
「そう、全部思い出したよ。月菜」
今まで僕は、街から街へ人の記憶に残る前に、誰の記憶にも残らないようにしてきた。この街に来るまでは、それが、些細なことで歯車狂ってしまった。今思うと、なぜ、あんな事故に巻き込まれたのか?あの事故も疑問に感じる。
「やっと、思い出してくれました。始めて会ったとき、ビックリしました」
看護師の月菜は、少しため息をつく。そして、ゆっくりと歩き始める。
「だって、スッカリ、私のことを忘れていたから・・・」
そうだ。月菜の言うとおり、僕は、この街に着て、過去の記憶を無くしていた。だから、この街で生活することにも疑問を感じなかった。僕は、この街にとどまるべきでは無かった。
「じゃ、まずは、始めの質問に答えてあげる」
月菜は望に近づくと、腕を伸ばして望の肩に手を回す。ゆっくりと望の体に手を巻き付けていくと、その体をピッタリと密着させる。清楚だった雰囲気は消え、妖艶な女性の魅力が表に現れる。
「どうして、こんな事をしたのか?」
「・・・」
「これは、当たり前の事よ」
「当たり前のこと」
月菜の手が望の顔をなぞっていく。
「そう当たり前の事。あの子の命は、最初の事故で助からなかった命、それを望がつなぎ止めた。自分の命を使って」
「・・・」
「だから、あの子の命と望の命が、ひとつになる前に・・・。私が元に戻しただけ」
「・・・」
「それに、あの子だけじゃないわ。この街には、望の命のニオイがいっぱいするわ。だから、この街で望を見付けることは簡単だった。そしてこの街にきて思ったの」
月菜は、体を密着させたまま、望の背中に回る。
「望は・・・今でも、死にたがっている」
月菜は望に背中から、ゆっくりと縛り付けるように手を絡めていく。
「僕は・・・」
「ねぇ~、忘れたの。望が私のこと『仲間』にしてくれたんだよ」
月菜は後ろから、望の顔をのぞき込むと、優しく唇と唇を重ねる。
月菜の束ねていた髪がほどけると、ゆっくりと長い髪が現れていく。そして、甘い白梅香の香りが広がると、望の前に白に桜模様の着物を着た女性が重なる。重なり、ひとつになった唇が、名残惜しそうに離れる。
「月菜・・・」
望が月菜の名を呼ぶと、着物を姿の女性は、元の看護師の姿に戻る。
「でもね。望は死なせてあげない。どんなことをしても望は死なせてあげない。そのために人間の命が百人必要なら、百人殺してでも。千人必要なら千人殺してでも。私は望の命のためなら、どんなことでもするわ」
「・・・」
「十年先も、百年先も・・・千年先でも」
「月菜・・・僕は・・・」
月菜は望の言葉を遮るように続ける。
「ねぇ、望・・・望は知ってる・・・死神だって、恋をするんだよ」
再び二人の影が重なる。ゆっくりと夕日が沈むと、空が黒く染まっていく。暗闇は二人の姿をかき消す。
そして、屋上への階段に、何も言えずに立ち止まったままの二人にも、ゆっくりと、ゆっくりと暗闇が、二人の表情をかき消していった。

 また、あしたね~第三章~ 完

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