月のかけら

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また、あしたね 4-1

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第四部 その1



 何だろう、甘い香りと、柔らかい感覚が肌を伝わってくる。軽く体に重みを感じるが、悪くない気分だ。耳に暖かい吐息が伝わってくる。何かを言っているように聞こえるが、心地よさがそれを理解させてくれない。
しばらくすると、今度は甘く暖かい、そして、柔らかな感触が伝わってくる。
「・・・」
僕は慣れない感覚に、ゆっくりと目覚める。うっすらと開き始めた視界に美咲の嬉しそうな、少し恥ずかしそうな顔が見えた。
「おはよう、望」
ゆっくりと脳が覚醒をすると、周囲の状況がみえてくる。僕はいつも通り、静かな中庭で、噴水の音を子守歌に昼寝をしていたはず。昼寝をする前は、静かだった中庭は、今は大きな罵声で、埋め尽くされている。この中庭は病院の廊下側から見えるような構造をしている。そして、今は、廊下の窓から、パジャマ姿の入院患者。お見舞いに来ている人、この病院の看護師の姿がみえる。
廊下からは、まず男性の罵声が聞こえてきた。怒りの声と泣き声が混じり、僕を罵倒する声が、いくつも重なって聞こえてくる。
「馬鹿野郎、医者の立場をわきまえろ」
「俺の美咲ちゃんを、俺の美咲ちゃんを」
「離せ、離せ、ここで息の根を止めないと、次が次がぁ~」
「なぜだぁ~いつも、いつもいいタイミングで邪魔する女は、どこにいったぁ~」
僕は、寝てただけなんだけど。どうして、こんなヒドイ罵声を浴びなければいけないのだろう。
そして、男性の罵声の次は、女性の嬉しそうな喚起の声が続く。
「ついに、ついにやったわねぇ、美咲ちゃん」
「美咲ちゃん、大胆」
「結婚式には、よんでねぇ~」
「応援してるわよぉ~年の差なんて関係ないわよ」
なぜだろう。男性の罵声に比べると、女性の声は、嬉しそうに聞こえる。僕は美咲をみると、美咲はうつむきながら、頬を赤らめている。いつもなら、抱きつきながら愛情表現をしてくる美咲らしくない。両手の人差し指を、付き合わせながら、チラチラと僕を見ている。
僕が美咲の仕草に疑問を感じ、何があったのか、美咲に問いかけると、美咲はゆっくりと僕の白衣の袖を掴む。
「・・・」
美咲は僕の顔を見つめる。
「やめろ、やめてくれぇ~」
悲鳴のような男性の声が響き渡る。
「きゃー、もう一回、もう一回」
女性からは、黄色い応援が聞こえてくる。
「美咲ちゃん?」
僕は普段みせない、美咲の愛らしい姿に首をかしげる。美咲が再びうつむきながら、僕の腕に抱きつくと、小さな口を開くと、小さな声で一言告げる。
「キス・・・、しちゃった」
その小さい声は、嬉しそうにも、恥ずかしいそうにも聞こえる。
僕は、やっと周囲の状況を理解した。この中庭で、みんなが見ている中庭で・・・キス。まさか、美咲が、こんな大胆な行動に出るとは思わなかった。
ここは、僕と美咲出会った場所。いつの間にか、ここで美咲と会うようになった。そして、心地よい場所に、僕は、ここで仮眠を取ることが多かった。宿直室より、人の目があるこの場所が、安全にも思えたからだ。でも、僕の考えが甘かったみたいだ。
「これからは、毎日、私が目覚めのキスをしてあげる」
次からは、昼寝の場所を考え直そうと思う。僕は、可愛いらしく上目遣いをする美咲と、廊下の窓で罵声と歓声を上げている人々を見比べる。
「もう、こんなに可愛い子が、目の前にいるのに、どこみてるの」
美咲はそう言うと、僕の腕を引っ張る。美咲の顔を見ると、僕は、今日、病院の廊下を歩けそうにないな、と思う。僕が、そう思うと白衣のポケットに入れたPHSが鳴った。すぐにPHSを取り出すと、急患の患者が運ばれてくると看護師から連絡だった。
美咲は、自分たちの中を邪魔されたのが、気に入らないのか、ちょっと、怒っていた。美咲は僕の腕に抱きついたまま、離れるの嫌がったが、このままと言うわけにはいかない。
僕は、病棟に戻る必要があった。美咲をなだめると、不満げに顔をみせるが、僕の明日の予定を聞くと、素直に開放してくれた。美咲には、気をつけて帰るように言うと、僕は、急いで病院に入る。
「今日は後ろに気をつけろよ。女子高生キラー」
病院の廊下を歩いている。途中、各務先生が嬉しそうな顔をしながら声をかけてきた。
「見てると思いましたよ。止めてくれてもいいじゃないですか」
僕は各務先生の隣に立つと不満をぶつける。
「なんだ、止めほしかったのか?」
各務先生は、僕の不機嫌を感じないのか、感じているのか、いつもと変わりない口調で返事をする。
「当たり前じゃないですか」
「てっきり、見てほしいんだと思っていたぞ、中庭で寝るとは、無防備もいいところだ」
「中庭の方が、安全だと思ってましたよ。人の目があるから」
「ホントにそうなのかぁ~。実は見られた方が興奮するとか、危ない性癖の持ち主だったり」
「そんなことありません、僕は健全な男性です」
各務先生は僕に疑いのまなざしを向けるが、僕は全力で無視する。僕が無視を続けると、面白く無くなったのか、各務先生は、フラフラと廊下を歩き出した。
「まぁ、今日は大人しく診察室にいた方がいいぞ」
僕が小さなため息をつくと、各務先生が手を振りながら一言、言ってきた。
「僕もそう思います」
僕が返事をすると、各務先生は笑いながら言葉を続ける。
「暴動が起きちゃうぞ、君が廊下を歩くと」
僕は、後ろからの複数の殺気を感じると、振り返らずに、まっすぐに診察室に向かった。


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2 Comments

てんちゃん.  

おはようございます

今年は病院にコンビニが入ったので、クーリッシュをたくさん食べられそうです!

2012/04/27 (Fri) 07:23 | REPLY |   

ひよひよひよも  

てぃかさん。

ひよひよひよもです。
うわー『また、あしたね』第四部がはじまっちゃってましたかぁ。
『誰よりもきっと』がクライマックスになろうとしているのに..
(わたしだけの都合な訳ですが..)
早く続きを読もーっと。

2012/05/06 (Sun) 23:11 | REPLY |   

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