月のかけら

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また、あしたね 4-3

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第四部 その3


「私はね・・・私は望に助けてもらったの」
「それは、知ってるわよ。私だって」
「この病院に入院して、一年が過ぎて、もう、いつ死んでもいいと思ってたのに」
美咲はそう言うと、屋上の一番景色が綺麗に見える場所に移動すると、クルリと両手を広げながら一回転する。
「ほら、こんなに綺麗なんだよ」
神咲は美咲の行動が、よくわからず、不思議そうな顔をする。美咲は広げていた両手を下ろすと、言葉を続ける。
「去年までの私なら、この世界は全部、灰色だった。何も見えない、何も感じない、何も聞こえない世界だった。嬉しそうな子供声に、患者さんの回復に喜んだり、心配してくれる家族に甘えたり、怒ったり、泣いたり、ホント、日常のただありふれた光景なのに、私には、何も見えなかった」
神咲は何も言わずに、美咲の話を聞いている。
「成功率10%以下・・・この手術を前にしたら・・・。ホントに、もう、死んでもいいと思ってた。死んで、楽になりたいって・・・どうして、世界は私に冷たいんだろう、どうして、私だけがこんなに不幸なんだろう・・・って、みんなに八つ当たりしてた」
神咲は、美咲の事を思い出す。前に望先生から、少しだけ聞いたことがあった。美咲の病気のこと、彼女の境遇の事。
「でもね。望に出会って、変わったの」
「変わった?」
「はじめは、変な先生って思ってた。私のこと、可愛そうな子って、程度にしか思ってないと感じてた。でもね、でもね、望は、そんな先生じゃなかった。私のこと、普通の女の子として接してくれるの。いつも、いつも、家や、親、会社の立場と都合を考えて、接してくる大人ばかり。友達だって、幼稚園、小学校、中学校と学年が上がるたびに、大人達と同じようになっていったわ」
本音と建て前と言えばいいのだろうか。神咲は多感な十代の美咲が、大人のずるい部分をたくさん見てきた事を想像すると、可愛そうに思えた。自分が十代の頃は、親に守られて、何不自由なく学生生活を楽しんでいた頃だ。それが当たり前だと思っていたし、特別だとは感じていなかった。
資産家の家に生まれれば、お金に困ることは無い。平凡な家庭に生まれた私とは違って、幸せだろうと思っていた。でも、美咲の話を聞いて、少し間違っていたように思えた。
「でもね。望は私と同じものを見て、笑って、怒って、悲しんでくれる。私を、影山家のお嬢様じゃなく、普通の女の子として接してくれるの。ちゃんと、ホントの私を見てくれている」
美咲は、両手を胸の前に重ねると、一呼吸する。
「そして、私は望に、この命と心を・・・救ってもらった。それに、ちょっと不思議な夢を見た気もする」
「・・・」
「たぶん、それも含めて、望がみせてくれたんだと思う」
「なら、どうして・・・」
「だから、私は、望を信じてるの、この世界の人達、全てが違うといっても、私は望を疑わない。望に出会ったから、今の私のがいるの。だから、だから・・・望が人間じゃなくても」
美咲の言葉は、最後まで続かなかった。その変わりに、屋上には乾いた音が響き渡る。
「あなた、自分が何を言っているのか、わかってるの」
美咲は頬を押さえる。神咲は右手をゆっくりと下げる。
「わかってるわ」
「死神なのよ。人の命を奪って、生きてるのよ」
神咲は、美咲の言葉に苛立ちを覚える。それを美咲に悟られないように、感情を深く押さえ込もうとするが、少し感情が言葉に出ている。
「そんなこと望は言っていないわ」
美咲は、神咲から平手打ちされた頬を押さえながら、返事をする。
「何を考えて、そんなこと言ってるのよ」
美咲はゆっくりを右手を自分の左胸にあてる。
「望に救ってもらった命だから、私は望を信じてる。だから、疑わないの、」
そして、美咲は神咲の顔をみると、力強い視線を向ける。
「だから、私は望のためなら、何でもするわ」
「・・・どうして、そこまで」
出来るの、と言いかけて神咲は言葉に詰まる。
「私は望の事が好きなの、好きだから、だから、ずっと一緒にいたいと思ってるの。望がいてくれればいいの。朝、望の顔を見ながら目覚めて、毎晩、夕食を食べながら一日の出来事を話して、毎日を生きていくの」
神咲は美咲の想いに唖然とする。そして、しばらくすると一言、言葉を返す。
「本気なの?」
「本気よ。好きな人と一緒になって、幸せを望んで何が悪いの」
美咲の言葉に、神咲は何も言えなくなる。美咲の一途な思いに圧倒された。周りの事を気にせずに、自分の思いを貫き通す気迫に、神咲は何も言えなくなる。
周りの意見を聞き、自分の思いを伝え、最良と思える着地点を探すことに、慣れてしまった自分には、もう出来ない。美咲には幸せになってほしいと思うが、このままにも出来ないと思う自分がいる。
「・・・」
美咲は何も言わない神咲を見つめている。
神咲は目を閉じる。何を言えばいいのか、わからなくなっていた。美咲の想いと、自分の想いを・・・。自分の想いは、何だろう。望先生と知り合ったのは、この病院だ。私は始め、望先生のことを、優柔不断な先生と思っていた。でも、色々、迷惑をかけたように思うが、仕事以外で気の合いそうな、男性友達と思っていた。これから、ゆっくりとわかりあっていきたいと思っていた。それが、昨晩から、変わってしまった。
どうすればいいのだろうか、何を言えばいいのか、わからないまま時間が過ぎる。再び、神咲が、目を開けたときには、そこに美咲はいなくなっていた。


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 小説 また明日ね・・・

- 1 Comments

ひよひよひよも  

てぃかさん。

ひよひよひよもです。
ここは、これより前のお話しを読ませていただいてからの
お楽しみということで..失礼しまーす。
(そんなこと、いちいちコメントするなって言われそう)

2012/05/19 (Sat) 13:23 | REPLY |   

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  • 2012.05.11 (Fri) 07:33 | まとめwoネタ速neo
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