月のかけら

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また、あしたね 4-5

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第四部 その5


「望がこの病院に運ばれてきた事だ」
「確か、事故に巻き込まれたってききましたけど」
「そう、交通事故だ。望がここに来たとき、体の外傷は、それほど無かった。でも、頭を打ったようで意識がなかった。私は、すぐに全身と頭の検査をしたよ」
「結果はどうだったんですか?」
「外傷は少なかったが、骨折と内出血が数カ所。頭は骨に小さなヒビがあったが、脳に外傷はなかったよ」
「大丈夫だったんですね」
各務先生の言葉に神咲は安堵の表情をみせるが、すぐに不安な表情に変わる。
「でも、その後に問題があった。血液検査の結果、血液の型が、まったく一致するものがなかった。三回、やり直したが結果は変わらずだ」
「そんな事って、あるんですか」
「ああ、血液には、まだ、わかってないこともあるんだ。でも、その時は、ボンベイ型のように亜種の一種だろうと考えたよ」
「じゃ、そんなに珍しい事では無いんですか」
「珍しい事だが、世界では、数十年に一度ぐらいの割合で、新しい血液が見つかっているんだ」
「知りませんでしたよ」
「まぁ、医者の私でも、わからない事があるんだ。普通の人ならなおさらだ」
「それで、その血液は、どうしたのですか」
「血液の解析を大学病院に依頼したよ」
「もう、結果は出てますよね」
「あぁ、新しい血液型として認められたよ」
「それだけなんですか」
「まぁ~な。依頼したのは血液成分検査だからな。それ以上の事は依頼していない」
「呆れました。各務先生は、もっと大人の女性だと思ってました」
「何が不満なんだ」
「わかってるはずですよ」
「何をいいたいのかな」
神咲は、少し考え込む。言うべきか、言わずにいるべきか。苦しそうな表情をみせる。各務先生は、神咲の表情をみると、一人で抱え込むなよと言う。神咲は、その言葉を聞くと、顔を上げて、話を続ける。
「望先生は・・・・・人では無いかもしれないんですよ」
「その疑いはあると思うよ」
「なら、世間に公表すべきです。警察にも通報すべきです」
「確かに、望を人以外の生き物として、世間にさらすことはたやすいよ。でも、それが最良の選択なのかは、私には納得できないな」
「・・・でも」
「望が人では無いかもしれない。人より、より優れた進化した存在かもしれない。今のところ、私も結論づけられていない」
「・・・。でも、それでも」
神咲は、望先生が、今後、何をするか?わからないと思うと、早めに、その危険を減らすべきだと考えている。その事を言うべきか、迷っている。望先生が悪事を働くとは思えない。でも、その可能性が無いとも言い切れない。神咲の中で、信じたい気持ちと、危ないと思う気持ちがせめぎ合う。知らなければよかった。知らなければ、今まで通り。でも、知ってしまった以上、何もしない訳にはいられない。どうするのが一番良いのか、神咲は迷っていた。
「なぁ、望が、なぜ旅を途中だったか、考えたことはあるか」
各務先生が、神咲の葛藤を見透かしたように言葉を発する。
「いいえ」
「私は思うんだよ。望が旅をしているのは、自分の存在が異常だとわかっているからじゃないか? 人に騒がれる前に、次の街へ、そして次の街へと、自分の存在を認識される前に移動をしているんだと思っている」
「どうして、そう思うんですか」
「この病院で働き始めて、半年ほど。私が知る限り、病院にも、病院の寮にも、誰も訪ねこない。ポストには、手紙が届いた形跡もないし、彼の個人の携帯電話が鳴ったこともない・・・」
先日の会議での、望先生の身辺調査の結果を思い出したが、それは、胸の中に押しとどめると、話を続ける。
「引きこもりの若者なら、わかるが、望を見る限り、普通に仕事をして、会話ができる訳だから、ここまで世間との関わりがないのは、不思議だと思ってな」
「だから、転々を街から街へと移動している考えたわけですか」
「あぁ、そう考えるのが妥当だろう」
「でも、今回は、どうして、望先生は、この街に・・・病院にとどまったのですか?」
「今、話した通りだ」
「・・・」
神咲は少し考えてから、ひとつの答えにたどり着く。望先生がここに来たのは、望んできた訳ではなく、事故にあったからだ。望先生の事故・・・。
「それは、事故で望先生が、頭を打ったから・・・、記憶を無くしていたから・・・ですか」
「個人のプライバシーだから、答えることは出来ない。だが、そう考えるのが、妥当だな」
「じゃ、記憶を取り戻したら」
「この街を、去っていくかもしれないな」
神咲は、各務先生の言葉を素直を受け止めると、もう一つの可能性を思い浮かべる。
「でも、望先生の記憶が戻ったときは・・・」
「それは、望にしか、わからないことだ」
神咲は、難しい顔をしながら考え出す。
「そう難しく考えるな」
「でも・・・」
神咲は、どうしても楽観的に考えられなかった。望先生をみていると、悪い人には思えない。でも、昨晩の言葉が神咲の頭から、どうしても離れなかった。
「また、いつでも相談には乗るから」
「・・・はい」
「何度も言うが、一人で先走るなよ」
そう言うと各務先生は、ベンチから立ち上がると、屋上を後にした。残された神咲は、ベンチに倒れ込む。目を閉じて、右手を左胸にあてる。心臓の鼓動が規則的に聞こえてくる。
「私はどうすればいいの・・・」
止めどない思考に、どうすればいいのか、神咲は迷っていた。一度は、好意を持った相手だけに、信じたい気持ちがある。けど、それと同等に、危険を感じる気持ちもあった。知らなければよかった。
あの日に病院に来なければ、こんな想いをしなくてもすんだ。この病院で、美咲と知り合わなければ、この病院に運び込まなければ、あの日にお酒を飲まなければ、次々と後悔が押し寄せてくる。
神咲は、大きく息を吸い込むと、ゆっくりと息を吐き出す。ベンチから見上げた空は、いつもと変わらず青空が広がっている。
「うらやましいなぁ~」
神咲は澄みきった青空を見ながら、一言つぶやいた。


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  • 2012.05.25 (Fri) 19:54 | まとめwoネタ速neo