月のかけら

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また、あしたね 4-13(エピローグ)

また、あしたね

また、あしたね 目次


小説「また、あしたね」第四部 その13


屋上に白衣を着た女性がベンチに寝ころんでいた。女性はベンチから空をみている。青い空に白い雲が次々と現れては消えていく。屋上に靴音が聞こえてくる。次第に音を大きくなり、ベンチに近くで音は止まった。
「まぁ、これで、ひとまずは落ち着いたかな」
女性は、ベンチに寝ころんだまま、独り言を言う。
「やっぱり、各務先生は、始めから、すべて、わかっていたんですね」
各務先生の独り言に返事をしたのは、同じように白衣を着た望だった。
「どうして、そう思んだ」
「香ちゃんが倒れたときのことです。はじめは月菜がやったと思ってました。けど、僕から、感染した月菜には、そこまでの力はない。じゃ、この世界で一番、僕に関わりがある人物は誰だろうと考ええると、各務先生しか残りませんから」
「そうか、」
「でも、教えてくれても、よかったと思いますよ」
「それは無理な相談だな」
「どうしてですか」
「君は、事故の後遺症で、記憶が曖昧だった。そんなときに『君は人間と違う』と言って、それを信じることが出来たかな?」
「それは・・・」
信じられなかったと思う。そして、記憶が曖昧だった僕が、それを聞いて、どんな行動をとるか。ちょっと、想像できなかった。
「君が無意識に力を、治療に使ったときは、どうすべきか、迷ったけどな。まだ、無意識の内は、許せたが、記憶が戻り始めてからも、君はそれを変えなかった。だから、その力を少し制限させてもらった。そして、その結果、起きたことは、自然の摂理だ。そこに偽りはない」
「・・・」
「そして、私は君が、どんな人物なのか、確認したかった。この社会で生きている資格があるか、無いのか。だから、月菜君を使って試させてもらった」
僕は、はじめて、月菜と各務先生が繋がっていると知ったが、あまり、驚く気にはなれなかった。やはり、各務先生は、全てを知っているみたいだ。
「それで、僕は、合格でしましたか」
「合格でもあり、不合格でもある」
「中途半端ですね」
「ここに来てからの君は、まぁ、色々あった。半分は合格だ。でも、ここに来る前の君はダメだな」
「どうしてですか」
「人との関わりを、無くして生きることは、不幸だからだ」
「・・・」
「違うか?」
「今は、まだ、わからないです。でも、少しはわかるような気もします」
各務先生はベンチから立ち上がると、病院の中庭をみる。そこには、美咲と神咲がベンチに座っている姿が見えた。
「少しでは、困るな。君には、守るべき仲間がいるからな。君が、どう思っていても、君は、彼女たちを、巻き込んだ責任がある。私は、君と月菜君の間に、何があったのかは知らない。それでも、君に責任があると考えるのが自然だろう」
各務先生は、中庭で言い合いを続けている二人を手を振る。
すべてでは無いが、ずっと長い間、秘密にしてきたことを世間に公表した。人の歴史の中で、秘密にすべきか、それとも公表すべきか、ずっと迷ってきた。我々の持つ、血の力。治療に使えると発表をしたが、いずれ間違った方向へ使う人々もでてくるだろう。その時に、後悔することになるんだろうか、と各務は思う。

病院の中庭に、二人の女性がベンチに座っている。人は学校の制服姿。もう一人はスーツ姿だ。
「これでいいの」
「何がよ」
「このまま、月菜さんに望先生を譲るつもり」
「そんな事無いわよ。今日だけ・・・今日だけよ」
美咲は、屋上を見ると、そこには、各務先生がいる。美咲は、各務先生に手を振りながら答える。
「ホントに」
神咲は少し、疑わしそうな声で返事をする。
「ホントよ。だって、私にも、時間はあるもの・・・たっぷりね」
確かに、各務先生の話が、本当なら、私達に時間は、限りなくある。話を聞いたとき、驚く気持ちと、嬉しい気持ち、恐怖を感じたが、それも、今は落ち着いた。自分だけじゃない。その事が一番、気持ちを落ち着かせてくれた。
「月菜さんの事を含めても、大丈夫なの」
神咲は、自信たっぷりに言う美咲に、再び問いかける。
「大丈夫よ。私は実年齢で、ピチピチの十七歳、月菜さんは・・・」
美咲は、神咲の顔を見ると、『何歳なの』っと疑問そうな顔をする。
「何歳でも、かまわないわよ! 私は、絶対に負けないから!!」
美咲の両手でガッツポーズをする。神咲は美咲を見ながら、この自信は、どこから来るんだろうと思う。やっぱり、若さが負けてるのだろうか、と思う。

中庭から、手を振ってくれた美咲に、各務先生は手を振り返す。
「彼女たちの事は、私も同罪だろうな」
少なくとも、今回の発表がどうなるのか、自分の手を離れた今、見守るしかない部分もある。増えた仲間もいることだし、何とかなるか、と思うことにする。
「じゃ、今後も、よろしくな、望先生」
そう言うと、各務先生は手を振りながら、屋上から出て行った。
 僕は、屋上から、空を見上げると、雲が流れているのが見える。遠い日の出来事を思い出す。あの日見上げた空は、この場所から見える空と同じだった様な・・・そして、懐かしい香りがしたような気がした。

後ろを振り返ると。屋上の扉の前に、白いワンピースを着た月菜が立っていた。
「遠い・・遠い・・・昔に、私は、七日間だけ恋をしました」
柔らかい風が、僕と月菜の周りを駆け抜けていく。懐かしい香りが、僕たちに忘れていた記憶を思い出させる。
「短い、短い時間でした。けど、それは私にとって、かけがえのない日々・・・でした」
月菜は、僕の顔をみる。月菜の瞳が少し潤んだようにみえる。
「私の恋は、あの七日間だけだと、ずっと、思っていました」
月菜は、少し思い詰めたような表情を見せ、少しうつむいた。僕は、何も言わずに月菜の言葉を待つ。月菜は、ゆっくりと、もう一度、僕の顔をみつめる。
「だって、そこには、私の一生分の想いが詰まっていたから」
「月菜」
月菜はゆっくりと歩き出すと、瞳から小さな涙が、こぼれ落ちる。
「だから、あの日、私は終わってもいいと、思っていました。でも、望には、生きていてほしいと・・・願いました」
「・・・」
僕は月菜と出会った街を思い出す。遠い昔の記憶、僕と月菜は出会った。時間にすれば、どれだけの月日が経ったのだろうと思う。今日まで、月菜は何を思って、生きてきたのだろう。僕には想像できなかった。
月菜が僕の前で立ち止まる。止めどなく流れる涙は、月菜のほほを伝い、地面へとこぼれ落ちる。
「私は最後に・・・最後に、わたくしは望と約束しました・・・、私のこと忘れないでほしいと・・・や・・・約束・・・約束しました・・・最後の約束のつもりでした」
僕は、ゆっくりと月菜を抱きしめ、優しく笑顔を向ける。それに、答えるように月菜は、少しぎこちない笑顔を見せる。涙を流しながらみせる笑顔に、僕は、遠いあの日に、止まった時間が、再び、動き出したように感じた。このまま、こんな時間が続くのもいいと感じたが、それは叶わないみたいだ。

「ああっ~、ダメ、ダメ、だめ、だめぇ~」
大きな声とともに、美咲が屋上の扉を開けて出てくる。それを面白そうに見ている各務先生と神崎が後ろに見える。望は二人の姿と、美咲と月菜を見る。そして、小さなため息をつくと、しばらくは、あわただしい日々が続きそうだと思う。

 でも、今、そう思える事が、少し嬉しいと、望は感じられた。


続く・・・また、あしたね~郷愁編~


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