月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

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See you・・・、その2

また、あしたね

また、あしたね 目次
See you・・・目次

また、あしたね~郷愁編~


 See you・・・その2

 山の麓に、小さな街が見える。山々の間から、朝日が入り、街を照らしている。街の中央には川が流れている。街は川に沿うような形で、少し大きめな屋敷や、家が軒を連ねている。街の周りは、大きな堀で囲まれ、川から引き込まれた水で満たされている。場所によっては、柵を張り巡らせている。遠くを見渡す櫓の様な建物もある。小さな街だが、思ったより守りを固めているような印象だ。
街の中の屋敷には、宿の提灯や、休憩処の幟がかけられている。他にも酒屋、食事処、小物屋など、商売をしている店が多くみえる。
街の正面と思われる場所には、大きな門がある。門の前には堀の水がみえる。街の中に入る手段が無かった。
門の前に男達が数人集まると、門の横にある大きな車輪に手をかける。数人の男達が車輪を手前に引くと、もう一人が車輪を固定している丸太をはずす。男達は、丸太が外れたことを確認すると、かけ声を掛ながら車輪を、ゆっくりと回していく。すると、車輪に結びつけられた縄が、門の両端の滑車をつたい縄が引き込まれていく。引き込まれた縄は、閉じられていた門を、ゆっくりと下ろし、堀と門の間に橋を出現させた。
男達は橋を下ろし終わると、最後に門の右に、立て札をかける。立て札には、『京へ、一番の宿場街』と書かれていている。
街の堀に橋が架かると、待ってましたばかりに街の中から大勢の人々が、橋を渡り、街の外へ出て行く。そして、街の中では、朝早い時間にもかかわらず、人が姿が多く見える。ほとんどの人が旅支度をしているようだ。この街では、朝早くから街を出て、京へ昼過ぎに入る人が多い。そのため、この街で、商売をしている人は、早朝と夕方が一番忙しい。
「はい、じゃ、これがお弁当です。道中、気をつけて行ってきてください」
女性が旅支度を終えた男性に笹で包まれた袋を渡す。
「おっ、ありがとうよ」
男性は笹の風呂敷を受け取ると、お礼を言い、宿屋を後にする。
「はい、ありがとうございます。また、おこしやす」
女性は男性にお辞儀をすると、宿屋の中に入っていった。宿の奥から、白い煙が上がり、中からはトントントンと気持ちのいい音が聞こえてくる。
女性は長い髪を手櫛で整え、赤い紐で数回髪を縛る。髪を整え終わると、今度は着物の裾の整えはじめる。少し色落ちしているが、藍色に、小さな桜模様の和服と、黄色の帯を締めている。女性は着物の胸元を押さえると、少し左右に引き締める。着物を整え終わると、宿の奥に向かって声をかける。
「じゃ、母さん。お客さんも、ほとんど出かけたから、私は、山菜を取りに行ってくるから、何か、ついでに必要なものはある」
女性は宿の扉にかけられている小さなかごを、二つ手に取る。女性はかごにつけられている紐を腰に巻き付けると、紐を体の正面で結びつける。
女性の準備が終わると、宿の奥から白髪交じりの母親が、歩いてきた。手には、笹の葉で作った袋を持っている。
「今日は、暖かくなってきたからね。河原に菜の花が咲いていたら、少し摘んできておくれ」
女性は、母親の声を聞くと、後ろを振り返る。
「少しでいいの」
「ああ、宿で出す訳じゃないからね」
母親はそう言うと、手に持っている笹の葉の袋を女性に渡す。
「そうなの」
女性は笹の葉の服を受け取る。袋を手にすると、まだ、暖かかった。受け取った袋を腰のかごに入れる。
「山菜は宿で使うけど、菜の花は、お父さんに食べさせてあげようと思ってね」
女性は、そう言うことなんだと、納得の表情をみせる。
「そう言えば、父さんの好物だったね、菜の花のわさび漬け」
「そうよ」
女性と母親は、小さな声で嬉しそうな声と笑顔を見せる。
「じゃ、月菜。気をつけていってらっしゃい」
「はい、じゃ、昼までには戻るから」
「嫁入り前なんだから、危ないところには行かないでよ」
「わかってますよ」
月菜は、宿の裏口から出ると、街の中央の門の前に来る。門には橋が下ろされ人々が街へ出入りをしている。そして、この街を守るための見張りの人が、二人立っている。月菜は見張りの人に、通行証を見せると橋を渡り、川沿いの道を抜けていく。
川沿いを歩いていると、月菜は、つがいの水鳥を見つける。そのつがいの水鳥は仲良く水辺を歩くと、後ろから、少し小さな子供の水鳥が追いかけてくる。仲が良さそうな家族を見ると月菜は、嬉しそうな声を上げる。
「お前達はいいなぁ~、好きな人と結ばれて」
月菜は、誰もいない川沿いを歩きながら、一人ぼやきはじめる。すると、月菜は不機嫌そうな顔に変わる。
「私も許嫁がいるけど、顔も知らないんだよ。
私も自由に、いろんな人と、お話しをしてみたいわ。宿では、お嬢様って言われていても、実のところ生活するだけで、精一杯だし。毎日毎日、宿のお手伝いで、ときめく暇もないからね。
宿に泊まる人は、夕方に来て、朝早く出かける人ばかり。位の高い人は、私の宿より、もっと、高級旅館に泊まるから、生活も楽にならないし、貧乏人は暇無しだよ。
それに比べれば、お前達はいいよねぇ~」
月菜は、川辺に腰を下ろすと、水鳥に愚痴をこぼす。水鳥は月菜の気持ちを察したのか、月菜に向かって鳴き声を上げる。少し優しそうな鳴き声に、月菜は返事をする。
「あら、お前達、私を慰めてくるのかい」
月菜の気持ちとしては、実際のところ、かなり複雑だった。親の決めた結婚、月菜の本心としては、嫌だっが、反対は出来なかった。この結婚は、この街の一番の武家の息子。月菜は知らなかったが、街で、宿の晩ご飯の買い出しをしている姿を、何度か見られていたらしい。それで、武家の息子から、結婚の申し込みがあった。両親としては、武家からの結婚申し込みを断る理由もなく。何度か、話を進めていたらしい。次の週末に、見合いの席で、私が断らなければ結婚が決まる。
見合いの席で、断ってもよいと言われていたが、実際のところ、月菜には断る出来ない立場だった。この結婚が決まらなければ、武家に顔に泥を塗る。
街の宿屋の娘が、武家の結婚を断ったとなれば、どうなるか。それを考えると、月菜には断る選択肢は無い。それでも、月菜は両親に、少しは楽をさせてあげられると思うと、この話が悪いことばかりではないと言い聞かせていた。でも、見合いの席が近くになるにつれて、月菜の中で不安が大きくなっていた。
つがいの水鳥は小さな魚を器用にくちばしで捕まえると、食事をしている。水鳥の中にいる小さな鳥は、ふたりのまねをして、魚を捕ろうとする。水の中に入っては出て、入っては出てを繰り返すが、なかなか思うようにはいかない。子供の水鳥は親鳥に助けを、求める鳴き声を出すが、親鳥は黙ってみているだけだ。
「可愛そうに」
月菜には、子供の水鳥の鳴き声が、悲しそうに聞こえていた。子供の水鳥は何度か、鳴き声を上げた後、つがいの親鳥が鳴き声を上げると、子供の水鳥は、もう一度、水の中に潜っていく。数秒が経つと、今度は子供の水鳥のくちばし、必死に逃れようとする小魚の尾ひれがみえた。
月菜は、その姿をみると、よかったと思う。でも、ホントに良かったのだろうとか?小魚の立場を考えれば、食べられてしまった。食べられる側と食べる側があると思うと、月菜は自分が感じた気持ちに、少し疑問を持った。
「私は、たぶん、あの小魚と一緒だね」
月菜は自分の今の心境を小魚に重ね合わせる。武家に嫁ぐと言えば、聞こえはいい。月菜の家としては、大金星だ。両親に、宿の使用人、隣近所の両親や、子供達、小さな頃からの友達から、うらやましがられた。でも、この結婚に月菜の気持ちは、入っていない。
宿の両親の手伝いをしながら、誰かと結婚して、宿を継いでいくような、ぼんやりとした未来を考えていた。けど、現実は、自分の思っていた未来とは違った。望んでいようと、望んでいまいと、その流れに、飲まれていく自分がいる。
このまま、流されることがいいのか、それとも別の道を選ぶべきなのか。まだ、月菜は迷っていた。自分の中の迷いを感じながらも、どうすることも出来ないと思っている。
「私の明日は、どうなるの」
月菜はそう独り言を言うと、川辺から繋がる山の道へ歩いていった。


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