月のかけら

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See you・・・、その4

また、あしたね

また、あしたね 目次
See you・・・目次

また、あしたね~郷愁編~


 See you・・・その4


「化け物を追い詰めろ」
大きな松明の炎が男性を追い詰めていく。右に逃げると、右に松明が現れる。左に逃げると、左に松明が現れる。逃げれば逃げるほど、追い詰められていく。男は逃げ場を求めて、周囲見渡すと、一カ所だけ松明の炎が無い暗い場所があった。
どう見ても、罠に感じるが、炎の熱さが男の判断を鈍らせる。男は、炎から逃げるため、炎の無い場所に駆け込む。男が後ろを振り向くと、炎は追ってこなかった。男はなぜだろうと思った瞬間、足下が大きな音をたてて崩れていく。
ゆっくりと、ゆっくりと周囲の岩が崩れていくのが見える。手を伸ばして、岩を掴んでも、次々と崩れていく。どうすれば、助かるのか、どうすれば、どうすれば・・・。
「・・・・・」
知らない天井が見えた。周囲は暗く、涼しい風が感じられる。額に冷たい感触を感じる。手を伸ばして見ると、それは、白い手ぬぐいだった。
「あっ、気がつかれました」
男は聞き覚えのある声だと思う。
「僕は、どうしてここに」
振り返ると、女性が隣に座っているのが見えた。藍色の布に針と糸を通している最中だった。
「覚えていませんか」
男性は、女性の問いかけに、周囲を見渡す。部屋と言うより、何かの物置に見える。四方には藁が積まれて、壁には農耕具が立てかけられている。男性は見覚えのない場所だと、思いながら、女性に振り向く。女性は鋏で糸を切り、針を針置き台に刺すと、『ヨシ』と小さな声で喜んでいた。
「私がここに連れ来てたんです」
「君が・・・」
「はい」
「でも、正確には、使用人に手伝ってもらいました」
「使用人・・・?」
「そうですよ。私の力では、ここには運べませんでした。あっ、ここ、物置として使っている小屋です。ちょっと、汚いけど我慢してくださいな」
「どうして、僕を・・・」
「怪我人を手当てすることが、悪いこと?」
「それは、」
いいことだろうと男性は思う。
「じゃ、まずは自己紹介です。私の名前は『月菜』、あなたの名前は」
「僕は・・・・」
男は、言葉に詰まる。
なぜ、だろう・・・、男は、名前を思い出せなかった。そして、どうしてここにいるのかも、わからなかった。わずかに、誰かに追われていた事は、覚えている。でも、なぜ、追われていたのか、わからなかった。男性の顔色が、蒼白に染まっていく。
「いいですよ。無理しなくても、言いたくなければ、言わなくても。でも、話せるようになったら、教えてください」
月菜は男性の顔色が悪くなるのを見ると、悪いことを聞いたような気がする。何か訳でもあるのだろうと思う。そして、このまま、男性をここに置いておいていいのか、少し迷いを感じる。
「・・・のぞみ、・・・望」
少し間をおいて、男性が口を開いた。月菜は嬉しそうな顔を見せ、男性にそばに寄ってくる。
「・・・望さん」
月菜の嬉しそうな笑顔を見ると、望は不思議そうな顔をする。どうして、そんなに嬉しそうな笑顔をしてくれるか、望には理解が出来なかった。
「じゃ、まだ、休んでいてください。動けるようになったら、この着物を着てください」
月菜はそう言うと、手にして布を男性の布団の上に掛ける。藍色の着物だった。
「お父さんのお古を仕立て直したものです。遠慮無く使ってください。動けるようになっても、この小屋から出ないでくださいよ。ちゃんと、仕立てた着物と治療費は働いて返してもらいます。逃げちゃだめですよ。私、これから宿のお仕事があるから、また、晩に様子を見に来ます」
そう言うと月菜は小屋を出て行った。月菜が出て行った後、望はゆっくりと起き上がった。体をゆっくりと確認する。どこにも痛みは無かった。右腕、左腕、右足、左足を順番に動かしてみる。右足と右腕に痛みがあった。そして、体を動かしていると頭の中がズキズキとする感覚がした。まだ、満足に動けないように思える。望は諦めて、体を休めると、もう一度、自分が、なぜここにいるのか、思い出してみる。でも、何度、思い出そうとしても、名前以外思い出せる事はなかった。何か大事なことを忘れている。そんな気持ちになるが、どうしても思い出せない、何かあったはず。気持ちは焦ったが、望には何も、思い出せる事は無かった。


 それから、三日ほど、月菜は昼前と晩に、小屋に、望の様子を見に来てくれた。街の様子や、月菜が宿屋のお嬢様であること、日々の不満や、面白い客がいたとか、来るたびに色々な話を聞かせてくれた。スッカリ、月菜のペースに乗せられていると望は感じていた。
まだ、自分の名前しか教えていない望に、月菜は、とても優しかった。名前以外、すべて忘れている自分の事が、少し怖かったが、月菜と一緒にいると、その内、思い出せるような気がした。
「しかし、すごい回復力ね」
月菜は望が立ち上がって、小屋の中を歩き回る姿をみながら、話をする。
「そうですか?」
望は、スッカリ体の自由を取り戻していた。初日に体の痛みを感じていたが、二日目には痛みは引いていた。
「そうよ、河原で見たときは、助からないか、助かっても一ヶ月は動けないと思ったわ」
「そんなにひどかった」
「そうよ」
「血で汚れてただけじゃないかな」
「・・・そうかな」
「じゃないと、三日で動ける訳が無いような気がする」
「う~ん、やっぱり、運がよかったのかな」
月菜は望の言葉に少し疑問を感じる。河原で見たときの傷口のひとつ、脇腹の傷は、かなり深かった。理由はわからなかったが、助かった事には、月菜も嬉しかった。自分が手当てした人が、亡くなるより、助かった方がいいに決まっている。月菜はそれ以上、深く考えることを終わりにする。
「じゃ、明日から、宿のお手伝いをお願いしてもいいかなぁ~と思うんだけど」
「明日からと言わず、今日からでもいいよ」
「ありがたいけど、今日のところは、この小屋の掃除を軽くでいいわよ。まだ、万全じゃないかもしれないし」
「今日のところは、お試しと言うこと」
「そう、お試しで小屋の掃除。それに、急に手伝ってと言っても、両親の了解ももらわないといけないしね」
望を助けたことは、すでに両親には言ってある。見ず知らずの人を、助けることはないと反対されると思ったが、意外とあっさりと両親は受け入れてくれた。
『何かの縁だから、回復するまで面倒を見ておやり、助かったら宿の手伝いをしてくれるといいだけどね』
と、言っていたので、宿の手伝いもあっさり、受け入れてくれそうだ。
「じゃ、私は宿にもどるから、夕方にもう一度来るからね」
「はい、それまでには、綺麗にしておきますよ」
月菜は望の返事を聞くと、すぐに宿に戻っていた。月菜を送り出すと、望は小屋の中を見渡す。年期が入った家具に、畑仕事の道具などが入り乱れている。何から手をつけるか、少し考えたが、一度、小屋の外に荷物を出して、それから考えようと望は思うと、一人で小屋の家具や道具を動かしはじめた。


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