月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

See you・・・、その5

また、あしたね

また、あしたね 目次
See you・・・目次

また、あしたね~郷愁編~


 See you・・・その5


「おはようございます。お嬢様、今日も暑くなりそうですよ」
「・・・」
宿の前で打ち水をしながら、望が月菜に話しかける。月菜は両手を頬にあてながら、嬉しそうな表情を浮かべると、ゆっくりと体を左右に振る。
「どうしたんですか? お嬢様」
望は、月菜の不思議な動きをみると、心配そうに声をかける。
「やっぱり、いいわねぇ~『お嬢様』って響きが最高。今まで、看板娘と言われていても、ほとんど自分で仕事をしていたから、何か、私が偉い人になったみたい」
「何を言ってるんですか、もうすぐにホントにお嬢様になれますよ」
明後日に行われる月菜のお見合いが終われば、月菜は正式に武家に嫁ぐことになる。そうなれば、家の手伝いなどしなくてもいい。
「そうだけど・・・」
月菜は言葉にはしないが、やはりお見合いには乗り気なれなかった。家のことを考えれば、断ることは出来ないと思う。自分の自由が束縛されたような気分だ。
「そう言えば、望はお嫁さんはいたの」
「・・・覚えてません」
ここ数日、何かを覚えてないか?街を歩きながら考えてみたが、名前以外は思い出せなかった。少し落ち込んだが、体は自由に動いたし、昨日から月菜の宿の手伝いをしている。
「まぁ、そのうち思い出すわよ。あまり悩まない方がいいんじゃない」
「ですよね」
月菜の言葉に明るく返事をするが、実は少し心配だ。名前以外思い出せない、本当のことだが、記憶の断片が、少し蘇ることがある。松明を持った男達に追いかけられ、追い詰められる夢。実際の起きたことなのか、望には判断つかなかった。しかし、思い出せる事が、こんな不吉な事ばかりでは、月菜には話せなかった。そして、このまま、ここに居てもいいのか、少し悩みはじめていた。
「何、暗い顔してるのよ」
「はぁ~」
「ほら、落ち込んでも、何も変わらないわよ」
月菜が望の肩を叩きながら励ます。
「おっ、朝から仲がいいことだねぇ」
月菜と望の後ろから、声をかけてくる女性がいた。背中に薬箱を背負っている。
「あっ、各務先生・・・」
月菜は少し顔を赤らめると、望を宿の中に押し込もうとする。
「違いますよ。各務先生、新しい使用人ですから」
各務は、少し怪訝な表情をみせる。
「ただの使用人には、見えなかったなぁ~」
各務先生と呼ばれた女性は、望の周りをぐるりと周り。男の品定めをする。
「結構、いい男じゃないかい」
望は、月菜に誰ですかと聞く。月菜は、数年前から御世話になっている薬剤師の各務先生と紹介する。
「もう、各務先生、私には、許嫁がいるんですよ」
月菜は、怒った表情をみせる。コロコロと表情が良く変わる娘だ。各務は、少し怒り気味の月菜をなだめると、話を変える。
「ところで月菜。父親の様子は、どうだい」
「はい、先生からいただいた薬で、病状も安定してますよ。去年までは、季節の変わり目に、咳が止まらなかったんですけどね」
「良く効くだろう、私の薬は」
「はい」
「自慢の薬だ。人にも効くし、お化けにもピタリと効くぞ」
「お化けにもですか?」
「そう、実体のないお化けにも効く」
「本当ですか」
月菜はお化けにどうやって、薬を飲ませるのだろうと思う。
「本当」
「試したことは?」
「ない」
各務は、きっぱりと、そこは否定する。
「じゃ、効くかどうか、わからないじゃないですか」
「私が言ってるから、大丈夫」
月菜、本当だろうかと思うが、いつもの各務先生を思うと、ここで納得しておくことにした。言い合っても時間を使うだけだ。それよりも、月菜には、確認しておくことがあった。
「各務先生、次、家に来るときは、薬のこと、望にお願いします」
「そうか、月菜は来月、嫁ぐことになっていたな」
「はい」
「早いな、もう、そんなに月日が経ったのか」
「そうですね」
「幸せになれそうか」
「わかりません。まだ、顔も見たことありませんから」
月菜は少し不安そうな顔をする。各務は、嫌なら逃げてしまえ、と言いたかったが、それは無責任だろうと思い言いとどまる。
「そうか、あと、二日ほど、この街にいるから、何か相談したいことがあれば、いつでも言ってくれ」
そう言うと、月菜の父親に使う薬を月菜に手渡すと、各務は街の中に消えていった。
「変わった先生ですね」
望は、月菜と各務先生の話が終わると、宿から顔を出した。
「やっぱり、そう思う」
「はい」
「そうだよね」
宿の中から、月菜を呼ぶ声が聞こえてくる。
「月菜・・・、ああぁ、望もいたのかい、ちょうど良かった」
月菜の母親が宿の中か出てくる。
「宿の食事に使う、米と味噌が、少なくなってきたから、ちょっと、買い出しに行ってきてくれ。望がいれば、一度に運べるだろう」
「でも、まだ、望は病み上がりだよ」
月菜は、少し心配そうに望をみる。
「大丈夫ですよ。もう、スッカリ元気ですから、お手伝いさせてくださいよ」
「そうなの」
「じゃ、お願いよ。無理そうなら、二回にわけてもいいから」
母親は、そう言うと、宿の中に入っていった。


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