月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

See you・・・、その8

また、あしたね

また、あしたね 目次
See you・・・目次

また、あしたね~郷愁編~


 See you・・・その8


「じゃ、母さんいってくるよ」
月菜は、いつの通り、台所に居るはずの母親に声をかける。しかし、台所からは返事はない。
月菜は、当たり前だよね、と感じる。昨日、月菜は、武家の結婚の申し込みを断った。誰もが予想をしていなかった返事に、皆は驚いた。
武家の結婚の申し込み、形の上では断る権利は月菜にある。しかし、武家から結婚の申し込み、正当な理由無く断ることは、前例が無かった。もちろん、月菜の気持ちが一番大切なことではあったが、武家からの申し込みを、宿屋の娘が断る事など聞いたことがなかった。
 月菜が結婚の申し入れを断ると、両家の親は大騒ぎした。月菜の父親は、すぐ武家の両親と息子に非礼をわびる。母親は、始めは驚いた様子を見せていたが、何度も武家の両親に頭を下げていた父親に変わると、少し月菜と話をする時間をいただけないかと武家に申し込んだ。
月菜と、両親は別室に移ると、月菜と話をする。月菜の気持ちを、何度も確認すると、両親は少し落ち込みながらも、月菜の気持ちをくみ取ることにする。自分たちは、月菜の事を考えていたつもりだが、家のことを考えていたのかもしれない。娘の幸せを願わない親はいない。娘が幸せになれないと感じた結婚。それを無理強いすることは、両親としても気が進まない。
両親は、月菜と話を終えると、部屋を出て行く。そして、両親は武家が待つ部屋に戻ると、結婚の申し込みを正式に断ってくれた。どんな理由を上げて断ってくれたのか、月菜には知らされていなかったが、武家の両親と息子は、かなり怒っていたと、月菜は聞かされていた。
月菜は両親の気持ちを思うと、複雑な気持ちだった。結婚の申し込みを断ったことで、宿を続けていくことも、難しくなるかもしれない。でも、どうしても、月菜は、顔もしらない相手との結婚を決断出来なかった。
「やっぱり、怒ってるかな」
月菜は返事の無い台所を見ている。いつもなら、母親の返事が返ってくるが、今日は無言だ。月菜は、このまま待ていても仕方がないと思うと、裏口から静かに出て行く。いつも通り裏口から、川沿いに出ると、山菜採りに出かけていった。

月菜が宿を出て行くと、慌てて月菜の後を追うように、望が出てきた。
『何を考えてるのね。あの子は・・・でも、私の娘だからね。しばらく、あの子についてやって』
朝早くに、月菜の母親は、月菜に身を案じて、望に、月菜を見張るように言ってきた。武家の息子の顔に泥を塗ってしまった。自分たちが月菜の事を考え、進めてきた話だったが、一番大事な月菜の気持ちを忘れていた。武家への非礼は、私達でお詫びする。幸い武家の両親とは、幼い頃の幼なじみだ。何とかなると思っている。でも、息子の方は、かなり激怒していた。このまま、収まるとは思えない。せめて、宿への嫌がらせぐらいで済めば安いものだと言っていた。
望は今朝の母親の話を思い出しながら、慌てて月菜を追いかける。
月菜が、いつもの場所で、山菜採りをしているなら、すぐに追いつけるだろう。望は出遅れた分を走って取り戻そうとする。宿の裏口から、街の中央の橋の手前まで来る。この辺りで追いつけるだろうと思ったが、まだ、月菜の姿は見えなかった。
「少し出遅れたかな」
望が橋を渡ろうとすると、街の中から小さな悲鳴が聞こえたような気がした。望は振り返ると、また、悲鳴が聞こえてきた。今度は、何かが倒れるような音も聞こえてくる。
「何が・・・」
悲鳴は、ドンドン大きくなっている。一人ではなく、何人もの人の悲鳴に聞こえる。物が壊れる音も聞こえてくる。低く腹に伝わってくる音は、馬の蹄の音だろうか。
「お嬢様」
望は、月菜が危ないと感じると、すぐに橋を渡り、駆け出す。何が起きているかは、わからないが、すぐに月菜を見つけるべきだと感じていた。橋を渡り、望は川沿いを走り出すと、すぐに月菜に追いついた。月菜も街に異変に気がついて、立ち止まっていた。
「望、街で何が起きているの」
月菜は不安そうな顔をしている。街から聞こえてくる悲鳴は、まだ続いている。男の狂気に満ちた叫び声が響き渡る。そして、女、子供の悲鳴が聞こえては消えていく。
「自分にも・・・」
街に何が起きているか、正確にはわからないが、街が誰かに襲われていることだけは、わかった。早朝の街は、月菜と望が通ってきた橋だけが、街へ入る手段だった。この街は、川と堀に守られ、橋の両側には見張りの人がいる。野党や、盗賊達が街に入れば、すぐにわかるはずだった。それが、なぜ街の中心から悲鳴が聞こえてくるだろうか。どうやって、街に入ったのか、月菜達は疑問に思うが、その答えは出なかった。
「何が起きているのか、わかりませんが、このまま、街に戻るのは危険です」
望は月菜に山菜を取りにいっている山に身を隠すことを月菜に言う。
「ダメよ、街には父さんや、母さんがいるわ」
月菜は、街から聞こえてくる悲鳴に、恐怖を感じる。何が起きているかは、わからないが、でも、街に残っている両親が心配だ。このまま、自分だけ逃げるにはいかない。月菜は不安を感じながらも、街に続く川沿いを走り出す。望は、月菜を一人にするわけにはいかず、すぐに月菜の前を走り出す。
二人は、すぐに街へ続く橋の手前まで来ると、走るのを止める。すぐにでも、橋を渡りたかったが、それが出来なかった。
橋の両側に見慣れない人・・・鬼が立っている。青い面をかぶった鬼が立っている。一人は左手に刀を持ち、もう一人は右手に刀を持っている。黒い和服に赤い帯を締めている。髪は黒く短く切りそろえられている。二人の異様なたたずまいに、望と月菜は橋を渡ることが出来なかった。
『追い詰めろ・・・』
望は青い鬼を見ると、目の前が暗くなるような感覚にとらわれる。火のついた松明が、ひとつ、ふたつと現れると、暗闇に赤い鬼が現れる。
『追い詰めろ・・・追い詰めろ・・・化け物を』
鬼の声に望は後ろにたじろぐ。
『化け物!!』
『化け物!!』
『化け物!!』
鬼の声は前後左右に広がる。どこへも逃げられない。望は、鬼の声に絶望を感じ始める。だが、その一方で、鬼の声を知っているような気がした。
「・・・望」
鬼の声に混じって、月菜の声が聞こえてくる。
「・・・望、どうしたのよ。望!!」
暗い世界の感覚が消え、月菜が心配そうに腕を掴んでいる姿が、見えてきた。
「望、大丈夫なの」
望は大夫だと答えるが、望の顔は血の気を失っていた。街に残している両親も心配だが、鬼を見てからの望の様子もおかしいと月菜は感じていた。
「この女だな」
青い鬼の一人が、月菜を見ながら、もう一人の青い鬼に話しかける。
「ああ、昨日、確認済みだ。後は、こいつを餌にすればいい」
月菜は鬼に言うことが、理解できなかった。でも、自分を見ながら青い鬼は餌だと言った。人を餌に何をおびき出すのだろうか。月菜が疑問に思っていると、青い鬼の二人が動き出す。
「連れて行くぞ」
「男はどうする」
「使用人には用はない」
望は月菜が、この鬼達の狙いだとわかると、月菜と鬼の間に割ってはいる。
「どけ、お前に用はない」
「お前に用はない」
鬼は望を左右に挟むように左右に分かれる。右の鬼は右手に刀を、左の鬼は左に刀を持ち望に向かってくる。
「お嬢様下がって」
望は、腕を掴んでいる月菜を一歩下がらせる。左右に分かれていた青い鬼は、望に手前で、ひとつに重なる。重なった二人の青い鬼は一人に見え、両手に刀を持っているように見えた。
「いい判断だ」
「いい判断だ」
二人の青い鬼は、再び左右に分かれると、一瞬で望の後ろに抜け出る。一歩後ろにいた月菜には、何が起きたか、わからなかったが、ゆっくりと倒れていく望の姿がみえる。
望は地面に倒れ込むと、その周りには赤い血が広がるが、月菜には、その姿は見えなかった。月菜のみぞおちに、青い鬼の手が入り込み、望が倒れるよりも早く、月菜の意識は暗闇へと落ちていった。


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