月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

See you・・・、その11

また、あしたね

また、あしたね 目次
See you・・・目次

また、あしたね~郷愁編~


 See you・・・最終章


「どの口が、その言葉を口にする」
赤い鬼が口を開く。
「・・・」
「我々の使命は、異形の化け物を刈ること・・・お前達を刈るために、多くの同胞を失った・・・お前達の事を恨むつもりはない。だが、恨みを持たないと言えば嘘になる。我々に出来るのは、ただひとつ。我々に与えられた使命を果たすこと、それが同胞へのたむけになる」
赤い鬼は、右手に抱えている月菜の体を、空に放り投げる。月菜の体は軽々と、赤い鬼の倍以上の高さまで上がる。そして、赤い鬼は左手に持った刀に手をかける。腰を低く落とし、両足を軽く開いていく。
「お前には、我々と同じ思いを・・・味わって死んでもらう」
空に上がった月菜の体が、地面へと落ちてくる。赤い鬼が左手が一瞬動いた様に見えたが、左手は刀に置いたままだ。動いていない赤い鬼の左手。しかし、空から落ちてきた月菜の体が、二つに切れたよ様にみえた。
「なぜ、巻き込もうとする」
赤い鬼は刀から手を離すと、低い音を響かせながら息を吐く。
「まだ、そんな力を残しているか」
二つに切れたようにみえた月菜の体を、望が両手で抱えている。月菜の体は切られていない。望の姿が赤い鬼の後ろに見える。赤い鬼が刀を抜く一瞬に望は、月菜を助け出していた。一瞬の動きに赤い鬼は驚きの声をあげるが、望の足下に広がる赤い血をみると、動かないはずの鬼の面が、笑ったようにみえた。
「・・・」
望が赤い鬼に注意を向けていると、後ろから武家の息子の悲鳴が聞こえてくる。望は赤い鬼に注意をしつつ、武家の男の様子がみえる位置に、ゆっくりと移動する。武家の息子が、腹から血を流して死んでいる。青い鬼達が、武家の息子を押さえ込み、刀を腹に突き刺していた。
「恋人を寝取られた武家の息子が、恋敵を殺して錯乱。そして街を崩壊させて、自害する」
「・・・」
「いい筋書だろう・・・。この街の状況、お前の立場、すべて利用させてもらった」
「・・・」
「お前が、この街に流れ着いたことは、知っていた。すぐに殺してしまおうと思ったが、瀕死の状態とは言え、お前の力は侮れない。お前を追い詰めるために、同胞を失った。だから、この街で一計を投じてみた。宿屋の両親には、訳あって、お前をかくまってほしいと、願いでた。数日でも一緒に暮らせば、お前にも情がわくだろうと思った。そして、我々の準備が整うまで、お前をこの街に足止めするため、街全体を餌にした」
「・・・どうして」
「若干、筋書きに変更があったが、思いのほか、効果があった。いつも、いつも、あと一歩のところで、お前には逃げられてきた。それが、今、こうして、お前から、娘に会いに来てくれた。そして、この街は我々の仲間が囲んでいる。お前には逃げ場はない。いや、逃げ出す前に、我々が、お前を殺してしまえば、この戦いも終わりだ」
「どうして・・・こんな事が出来るんだ」
望は月菜を抱えたまま、膝をつく。
「どうして・・・」
遠く忘れたはずの記憶を、望は思い出す。朝、起きてから始まる日々。当たり前のように両親がいて、姉がいる。寝坊をすると、いつも姉に怒られていた。畑仕事と狩りの仕方を父親から教わり、山の恵みと料理を母から学んだ。村には、少ないながらも友達がいた。他の村との交流もあり、自分たちは普通に暮らしていた。それでも、数年おきに生活する場所を変えて生きてきた。小さな頃は、慣れ親しんだ場所を捨てることに疑問を感じた。けど、時の流れが自然と、その訳を教えてくれた。同じように生まれた子供達が、成長し、やがて老いていく。でも、自分達は、成長と老化の時間が人とは違った。
「どうして、おまえは人と同じ姿形をしている」
人は我々のことを、化け物と呼んだり、不老不死のこの体を欲した。そのたびに争いが起き、仲間達が、父親が、母親が姉が亡くなっていた。静かに暮らしていきたい。争いたくないと望んでも、それを許してくれない。
「その爆発的な身体能力、人の何倍の寿命。人であって人にあらず。そしてそれは、人にとって驚異となる。お前のその力を巡って、天下を争う大きな戦いを生む。その不幸を生む元凶をたつためなら、この街ひとつ・・・安い代償だ」
赤い鬼が再び、刀に手をかける。望は赤い鬼みると、月菜を抱える。赤い鬼の剣は居合い。間合いに入れば、切られる。でも、生きていて、どうする。自分が生きているだけで、多くの人の命を奪ってしまった。自分は、生きている資格あるのだろうか。一瞬の迷いだった。その迷い、鬼達は見逃してはくれない。
「どうして、僕のために・・・」
後の言葉が続かなかった。肉を引き裂く感覚が左足と右脇腹に伝わってくる。一瞬の迷いだった。その隙を見逃さずに、二人の青い鬼は後ろから、望を斬りつけてきた。引き裂かれた足と脇腹から、赤い血が流れ出てくる。左足の激痛で望は片膝をつく。かろうじて、急所と月菜への一撃をさけたが、橋で受けた傷と、今の一撃で、もう望の体は満足に動けそうにはみえなかった。
「お前を確実に仕留めるためだ。お前のその命、生きているだけで罪だ」
生きているだけで罪。そんな事はあるのだろうか? 望はぼんやりとする頭で考えようとするが、急速に眠気が襲ってくる。僕も、これでやっと、両親と姉の元にいける。やっと、これで安らぐ世界にいける。
「これで、最後だ。すぐに女も送ってやる。あの世で仲良くな」
赤い鬼が刀を抜きながら、急速に近づいてくる。空気が地鳴りのように響き、池の水がしぶきをあげる。刀の鞘から、刀身がみえる。望には一秒が、何秒にも感じた。でも、これで終われると思うと、不思議と待つことが出来た。これで終わり・・・。
これで終わりと思った。これで終われる思ったが、終わりは訪れなかった。赤い鬼の刀が目の前に来たとき、一瞬、目の前が真っ暗になった。そして、次の瞬間、人が切られる音が聞こえてきた。ゆっくりとゆっくりと、赤い鬼の刀が振り下ろされていく。なぜ、こんなにも時間が長く感じられるのだろうか、望は疑問に思う。

振り下ろされた刀は、月菜の右肩から、左脇腹を抜けていくのが見えた。望は何も出来ずに、ただ、見ていた。見ていることしかできなかった。

赤い鬼の刀が鞘に戻る音が聞こえた。炎の音が広がり、屋敷が崩れ落ちる音が続いて聞こえてくる。
望の目の前に月菜が立っている。その体からは、赤い血が止まることなく流れ出てくる。月菜は一歩、望に歩き出すが、今にも崩れ落ちそうになる。望は傷を押さえながら、立ち上がると、崩れ落ちそうな月菜を支える。静かに、静かに月菜と望の二人の赤い血が、混じり合いながら地面に広がっていく。
「ごめんなさい。こんな事に望を巻き込んでしまって・・・」
月菜は、大粒の涙を浮かべる。
「私が、断らなければ、こんな事にはならなかったのに・・・私が好きにならなかったら、こんな事にはならなかったのに・・・」
「そんなことはない。悪いのは、私だ・・・」
死ぬつもりで、山から身を投げたはず。それが、生き延びて、この街で暮らしはじめた。何もかも忘れていた。自分のこと、鬼に追われていたこと。人の世に絶望していたこと。もう、終わりにしたいと願ったこと。
でも、生き延びて、この街で救われた。月菜に出会って、人の優しさを思い出した。この街で人の情に触れた。そして、悲しいと感じ、助けたいと、思った。
「死ぬつもりだった。死ぬつもりだったが、私が・・・生き延びてしまった。」
月菜は、震える手で望の口を、人差し指で軽く押さえる。
「知って・・・ましたよ」
望は月菜の手を取る。望と出会ったあの日、月菜は望に体をみると、峠から落ちたと思っていた。望みのボロボロの身なりからして、生活に苦しんで自殺したと感じていた。あの河原には、たまに、峠で自殺した仏様が流れてきてきていた。望もその一人だと月菜は思っていた。
「ひとつだけ・・・我が儘・・・を・・・言わせてください」
「・・・あぁ」
「死なないでください。私が繋いだ命・・・無駄にしないで」
握りしめた月菜の手が、急速に冷たくなる感覚が伝わってくる。
「わかった。わかったから、頑張ってくれ・・・」
僕は死を選んだ。でも、この街で、それが間違いだと気がついた。一度は、生きていきたいと思った。でも、また、僕は死を選ぼうとした。
「必ず、だから、お嬢様も・・・」
その結果、また、僕は守られて、僕が生き残っている。
「もう、ひとついい」
望は無言で頷く。
「次に・・・出会ったときは・・・・よ・・・・んで」
月菜の手が、望の腕をすり抜けて落ちていく。
「お嬢様・・・」



 暗い夜が明け、朝の日差しが街を照らし出す。ここで人が暮らしていたとは、思えないほど荒れ果てている。かろうじて、焼け残った軒先に月菜が、綺麗な着物を着て、静かに寝ているように見えた。昨晩、月菜を看取ってからの事は、あまり覚えていなかった。激情に駆られて、青い鬼から刀を奪い。鬼達に立ち向かっていった。それからの事は、覚えていなかった。気がつくと、月菜を抱きかかえて、月菜の両親の元へ戻ってきていた。

「月菜・・・もしも・・・と思って、今日まで待ってみた」

 望は月菜に出会った日の出来事を思い出していた。数日だったが、月菜の心に触れ、望は人に戻れたような気がしていた。鬼に追い詰められ、何年も隠れ、潜んで生き延びてきた。そんな、隠れ潜む生活を続けた結果、望は人を疑うこと、人から逃げることをばかりを考えるようになっていった。この街に着たときも、鬼に追い詰められ、峠から死ぬつもりで峠に身を投げた。でも、月菜に助けられ、望は生き残った。
いつもの自分なら、すぐに街を逃げ出していた。でも、この街では、名前しか思い出せなかった。記憶を無くしていた。
 それが、月菜を・・・、街を巻き込んだ原因だ。自分が、この街にとどまったから・・・悲しい結果を呼び込んでしまった。そして、この街には、とどまっていることは出来ないと、今は、わかってはいた。でも、すぐには、この街を出ることが出来ない理由があった。望は月菜の顔に手を添える。
「月菜・・・君が人間でなくなったかもしれない・・・その心配があったから、僕は、今日まで待ってみた」
月菜の顔は生きているように見える。けど、やはり息はしていない。
「でも、その心配は無かったみたいだ・・・・月菜、君は人として死ぬことが出来る。僕には、それが、とても、うらやましいよ」
望は月菜を顔から手をゆっくりと離すと、立ち上がる。
「月菜・・・、僕がこの峠で死のうと思わなければ、記憶を無くしていなければ、君に助けられなければ・・・、君は許嫁と、この峠街で幸せに暮らせていただろうか。僕が来なければ・・・。俺の持つ力が、君を不幸へと導いたと思うと、どうすれば、俺を許してくれるだろうか」
望は月菜と月菜の両親をみる。
「僕が死ぬことで、許してくれるだろうか」
月菜の最後の言葉を思い出すと、望は、その考えを否定する。月菜は望に生きることを望んだ。死を選べば、それは、月菜の想いを否定することになる。
「死ぬわけにはいかない。月菜が二度も繋いでくれた命、大切にするよ」
望は月菜の宿を出ると、歩き始める。
どこに行けばいいのか、どこにたどり着けばいいのか、今はわからない。でも、逃げ回る日々は終わりにしたいと望は思う。たった数日だったが、月菜から感じられた気持ちに嘘はない。月菜の気持ちに答えたいと思う。その気持ちを、今の自分を信じたいと望は想いながら、歩き続けた。
 
 
 
 風が頬をつたう感覚に、月菜は目を覚ます。なぜだろう、意識がハッキリしない気がする。周りを見渡すと、見慣れない部屋に違和感を感じる。ここは、どこだろうと思う。
「気がついたみたいだね。やっぱり、私の薬は人にも、幽霊にもしっかり効く。さて、何から話せばいいのか、少し悩むが・・・。なに、時間はたっぷりある。気持ちを落ち着けて、紐解いていこう」
月菜の前には、嬉しそうに表情を見せる薬売りの姿があった。
 
 
 

また、あしたね~郷愁編~

 See you・・・完結



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 小説 また明日ね・・・

2 Comments

リリアスキー  

 こんばんわ、私です。 お疲れ様でした。 

 リンク先の『うちのこ』の主、おとそらさんも今日で節目を迎えております。 奇しくも両方の節目に立ち会えた幸福にしみじみと浸っております。

 昨日のコメでは 『See you』の中身ばかりに捕らわれて、すべてが『また、明日ね』 に繋がる大河ドラマであることを失念してました。
 
 いやあ、申し訳ない。 心よりお詫びします。 

 武家の息子と同じくらい反省しています。 (それって、反省してる?(゜□゜;) )

 とりあえず、薬売り、ありがとう。もっと早く来て。(おい!( ≧▽≦)/)

 駄文は置いておいて、てぃかさん、お疲れ様でした。(土下座) まずはゆっくり休んで下さいな。

 

2012/10/27 (Sat) 00:01 | REPLY |   

川倉 優  

不死って…

最終回しか読んでいませんが望が「生きる」を選択した事がよかったなと思いました、どんな事があっても生きていれば何かある筈「棄てる身在れば浮かぶ瀬在り」と言いますし、きっと月菜も望に「生きて」とう言った筈です。
でも不死とは本当に大変ですね、人の命は有限だから良いのだなと改めて思いました。

2012/10/27 (Sat) 00:30 | REPLY |   

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