月のかけら

ドール写真とオリジナル小説『月のかけら』のブログです。最近はツィッター(@teaca_twi)でも活動中ヾ(°∇°*) オイオイ

月のかけら ~第一章その12~

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月のかけら~第一章
~目次~



第一章 その12

男は美喜にナイフが届くギリギリの距離に詰めると、動きを止める。二人とも動かず、お互いの隙をうかがう。鋭い緊張感が漂う。龍也は二人の動きを見ながら、何かできないか考える。しかし、男の隙を作る前に、美喜の隙を作ってしまいそうで、手が出せなかった。何も出来ずに数分が経過しただろうか、イヤ、数分に思えたが、手元の時計で、まだ、数十秒。極度の緊張感が、二人の神経を削り取っていく。相手が軍人なら、美喜が圧倒的に不利に思える。このまま、しばらく膠着状態が続くと感じたが、先に男が動いた。美喜が一瞬、龍也に視線を向けた一瞬。この隙を逃さずに、男がナイフで斬りつける事が出来る距離。歩数にして一歩。たった一歩を美喜の視線の反対側から詰めてくる。同時にナイフを下からえぐり取るように突き出してくる。美喜は一瞬の事に反応が遅れる。スフィアフィールドには、緊急警報が表示され、男の動きと、ナイフの動きの予想軌跡が表示される。

『回避率 三%』

絶望的な数値が表示される。しかし、その数値を見ても、美喜は絶望も恐怖を感じていないように見える。まだ、諦めていない。そんな強い意志が見える。男は、美喜の隙を捕らえたと、悲鳴のような奇声をあげながら、ナイフが美喜の体を切り裂く感触を、確信する。
ナイフが美喜の体を貫くまで、あと、コンマ数秒。もう、止めることは出来ない。そう思えた。ナイフは美喜の体に刺さり、肉を切り裂き、赤い血が流れる。そんな光景を男は疑っていない。
しかし、その光景を美喜と龍也は想像していなかった。美喜に切り裂くと思われたナイフは、美喜がいたはずの空間を、むなしく切り裂き、肉を切り裂く音は、空気を切り裂く音に変わっていた。
そして、男の後ろに美喜の姿が現れると、男の顔には信じられないと言う表情が刻まれると、手にしていたナイフが音を立てて落ちる。ナイフに続いて、男も体もゆっくりと崩れ落ちる。崩れ落ちた男の体には、みぞおちに大きな衝撃をうけたような跡が浮かび上がる。
美喜は、大きく息を吐くと、胸に手を当てて、一息つく。すると、スフィアフィールドに、アクティブモードエネルギー残量ゼロと表示される。
美喜と龍也の使ってるAiS<アイス>には、大きな機能が二つ備わっている。ひとつはスフィアフィールド、現実世界を解析し、現実を上書きして表示する機能。そして、美喜達が着ているモーションアシストと呼ばれるスーツ。人では、ありえないスピードの動きを実現する。たったコンマ数ミリの体にピッタリに仕上げられているスーツは、見た目はウェットスーツに見えるが、アクティブモードに切り替えると、スフィアフィールドの情報と連動して、人の動きをサポートする。拳銃程度の連射であれば、射撃時の銃身の角度で、銃弾の軌跡を計算。銃弾が発射されるより早く、モーションアシストの機能で、銃弾を避けることが出来る。人の動きをかわすことぐらい問題はない。
「龍也・・・、ここから帰るの・・・大丈夫かな」
美喜は、アクティブモードのエネルギーが無くなったAiS<アイス>での、帰りを心配する。
「だから、言ったじゃない。他のメンバーに任せるか、明日にしようって」
「でも、明日じゃ、助けられなかったわよ」
龍也は、子供達のことを思い出すと、間違っていなかったと思う。けど、命の危険があったことには変わりはない。それを思うと、手放しには喜べなかった。
「まぁ、助けは呼んだから、それまで、ここで待機かな」
そう言うと、美喜と龍也の声に反応して、子供達が恐る恐る龍也の後ろから出てくる。
「お姉ちゃん勝ったの」
「そうよ」
美喜は少し偉そうに胸を張ると、嬉しそうに子供達が美喜に周りに集まる。子供達は、どうやって男を倒したのか、嬉しそうに美喜に聞いてくる。子供達からは、先ほどまでの泣きそうな表情は消え、嬉しそうな声と表情をみせる。龍也は、美喜が子供達に囲まれて、困っている姿を見ると、しばらく困ってなさいと思った。


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 (新)小説 月のかけら

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